みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。

今回は、『安全は知識から生まれる──整形外科学が導くプロの指導』というテーマで、講座で学ぶ意味をお話したいと思います。

バレエのレッスンをすることで、バレエが上達するのはいわば当たり前の話。
そして、教師はそのためにいる存在です。
けれど、私たちが本当に育てたいのは、安全を管理できるプロフェッショナルな指導者です。

生徒を伸ばすだけでなく、その過程で起こりうるリスクを予測し、未然に防ぐことができる人。
その力を支えるのが、「整形外科学」という学びです。

「解剖学」という言葉はよく知られていますが、
「整形外科学」は少し馴染みがないかもしれません。
整形外科学とは、骨・関節・筋肉・靭帯など、身体の運動器に関する障害や外傷を専門的に扱う医学分野です。

バレエの動きは、美しさの裏で、非常に高い身体的負荷を伴います。
だからこそ、そのリスクを正しく理解することが、本当の意味での“安全な指導”の出発点となります。

たとえば、「股関節の形」
人それぞれ違うことをご存じでしょうか?
そもそも股関節が外旋しやすい人もいれば、そうでない人もいる。
中には、無理に外旋させてはいけない構造を持つ人もいます。
それを「個性」や「特性」と呼ぶのですが、それを知らずに、ただ“もっと開いて”と指導することは、
美しさの追求ではなく、ただただ危険を生み出す行為です。

そのようなことは、バレエ教師としての経験だけでは、身体の内部構造までは判断できません。
だからこそ、実際にその「中」を知り、手術を行っている整形外科の先生から直接学ぶことが、
もっとも確実で、安心できる方法なのです。

そして、もう一つ大切な視点があります。
たとえば、捻挫をする。あるいは肉離れを起こす。
その後、その怪我をした箇所がどのような流れで、どれだけの時間をかけて治っていくのか、
あなたはご存じでしょうか?
なぜ病院で「安静にしてください」と言われるのか。
その意味を理解することも、整形外科学の重要な学びの一つです。
それを知ることで、ただ「休ませる」ではなく、
「どのように回復を支え、未来に残さないか」を考えられるようになります。
医師から直接そのプロセスを学べるというのは、指導者にとって本当に貴重な機会なのです。

本資格では、整形外科専門医による講義を通して、外傷や障害の種類、発生しやすい部位や原因、
そして各年齢層で特に注意すべきポイントを学びます。
成長期の骨、成人期の関節、加齢による変化。
さらには、各関節の細かい障害の種類などを網羅的に学んでいきます。
学ぶことでわかるのは、それぞれにリスクの傾向があり、対策も異なるということ。
生徒の小さな変化を早期に察知できるかどうかは、指導者の知識と観察力にかかっています。

整形外科学を学ぶということは、怪我の治療法を学ぶことではありません。
それは、「怪我をさせないための教育」を学ぶこと。
痛みや違和感を放置せず、必要に応じて医療機関に繋ぐ判断力を持つ。
その冷静な判断こそ、プロフェッショナルの証です。

バレエ教師は医師ではありません。
けれど、「医療を理解している教育者」であることはできます。
その知識が、生徒と医療をつなぐ“橋”となり、未来の健康と成長を守る力になるのです。

安全は、偶然ではなく知識から生まれます。
整形外科学を学ぶことは、生徒を守るだけでなく、指導者自身の身体を守ることにもつながります。
そして何より、生徒一人ひとりの身体に宿る「違い」を尊重し、
その中からこそ美しさを引き出せる指導者になるための第一歩です。

それが、教育としてのバレエを支える“科学的な優しさ”。
整形外科学は、芸術を支える静かな土台なのです。

バレエ安全指導者資格®︎ 事務局

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https://safedance.jp/apply/basic_archive/