本資格は【安全と健康】をテーマに、バレエ教師というキャリアを応援するために生まれた資格です。

プロのダンサーがいるように、プロの指導者を育てたい


日本ではバレエの教師資格がなくても指導が出来ます。
そもそも資格がないと教えてはいけないというルール自体もありません。

ですので極端なお話をすれば“バレエを全く知らなくても”バレエ教室を開き、バレエの先生として活動出来てしまうのが日本のバレエ界の現状です。

バレエへの情熱や愛情があり、それを誰かに伝えたいという想いがあれば、誰でも教師として活躍出来るというのは素晴らしいことです。

ですが、医学的に見てもバレエというジャンルは身体への負担が大きく、身体への正しい知識と理解、特別な視点やスキルを持って生徒さんと接しなければ、怪我をさせてしまうことにも繋がります。

ダンサーとして自分自身の身体能力を向上させるために習ってきたバレエと、生徒さんの身体能力を向上させ、より良いパフォーマンスを上げるためのレッスンを提供する教師では、同じバレエであってもその視点や学びのベクトルが違います。

例えばターンアウト一つとっても、股関節の状態によっては関節可動域の制限があり、先生が求めているターンアウトが骨格上不可能である方もいらっしゃいます。
そこで生徒さんに無理をさせた結果、股関節を痛めてしまい、人工股関節の手術を受ける、、、。
そんな残念なことも現実には起きています。

ダンサーである、またはダンサーであった自分自身の経験や体験だけの引き出しでは、正しく安全に全く個性の違う人間を導くことは難しいと言わざるを得ません。

身体の基本的な構造の理解はもちろん、そこには個性があり、ある意味一律に同じ機能を求めるバレエには当てはまらない人もいるという事実を知ること。
先生が学ぶことによって防げる怪我や障害があるということを知っていただくこと。
そして、より安全にバレエを提供していただくこと。それがこの資格の目的です。

学ぶことで相手を気遣える人になる

【学ぶ】とは、それまでの自分では想像もつかなかった事実や現実を知り、自分とは個性の違う相手のことを気遣うことの出来る幅を広げることだと思います。

例えば【栄養学】であれば、成長期特有の身体の仕組みを学ぶことで『もっと細くなりなさい』というような言葉を子供達には発することはなくなるでしょう。

【心理学】では、発達段階の特徴を学ぶことによって、なぜ子供達が集中出来ないのか、なぜ先生の言うことを聞かなくなってしまうのかを理解することで、それぞれの段階にあった声かけや指導が可能になるのです。

既に解き明かされている事実を学ぶことで、生徒さん一人一人が抱えている問題に対して対応できるようにもなり、今現在生徒指導において不安を感じている先生方のお悩みの解消にも繋がっていきます。

そしてバレエの世界では指導中に生徒さんの身体に触れることも多いですが、医学の世界では医療資格のない人に自分の身体を触らせないことが常識です。

また幼少期からバレエを始める方、シニアになってから始める方と年齢層も幅広く、それぞれの年齢の特性を知った上で指導をする必要もあるでしょう。

バレエ人口は増えているにもかかわらず、各年齢や身体条件を考慮して指導出来るプロの指導者の養成は全く行われていません。

【替えの効かない身体を預ける】という意味では、どのような先生に習うのが安心出来るかは想像に難くありません。

安全に取り扱う、安全に提供するための知識と技術の習得

既にバレエを知っている方であればおわかりかと思いますが、バレエは何かあればすぐ怪我に繋がります。
バーレッスンですら、身体を痛める原因を容易に作り出します。
事実、今現在身体を痛めている方も多いでしょう。

ということは、バレエとはそもそも危険なものであると考えることも出来ます。
バレエや身体の使い方について全く知識や体験のない状態で指導すればどうなるか、想像すると怖いですよね。

何かが起きてからでは遅いのが人の身体に関することです。

この資格で学ぶことによって、安全に配慮しながら指導できる視点やスキルを身につけていきましょう。

もう一つの見方をしてみましょう。

バレエが上達する方法は一つです。
『レッスンをし続けること』以外にありません。

ではどうすればレッスンをし続けることが出来るでしょうか?
それはやはり『健康』であることが条件になるのではないでしょうか。

生徒さんにもっと上達をしてもらいたい、させてあげたい。
そう先生方は望んでいると思います。

楽しくバレエを踊り続けてもらいたい。
そう願う先生方も多くいらっしゃると思います。

どちらの場合もまず一番に大切なことは『健康』です。

それは生徒さんに限らず、先生ご自身にも言えることです。
先生が身体を痛め、怪我をしてしまっては指導が出来ません。
生徒さんにお手本を見せることも出来ませんし、仕事自体し続けることも出来ません。
先生ご自身が健康であることも、バレエの世界においてはとても大切なことなのです。

自分自身の身体も大事にしながら、人の身体の安全にも配慮できる、そういった指導者が多く生まれることを願っています。

安全に指導するためにできること

バレエ安全指導者資格は先生方が伝えたいバレエの形やそれぞれが学んできたメソッドはそのまま大切にして頂き、安全に指導することにフォーカスした勉強を徹底して行っていきます。

医師やスポーツ栄養士、公認心理師などの国家資格をお持ちの先生方から直接身体や心について学べることは特に貴重な体験となるでしょう。

【女性アスリートの三主徴】という言葉を聞いたことのある方もいらっしゃるかと思いますが、特に女性が活躍するバレエ業界において、女性の身体について学ぶことは必須です。

また本資格では座学で知識を詰め込むだけで終わらないように実践に使える身体の使い方やエクササイズを個性豊かで確かなキャリアのある先生方から学んでいきます。

さらにワガノワメソッドやチェケッティメソッド、バレエの歴史について学ぶことで、伝統あるバレエを受け継ぎ、発展させる者として自覚ある指導者の育成にも務めます。

先生ご自身が自信を持って現場に立つことはもちろんのこと、その現場において生徒や保護者の方々、他の先生方やスタジオのスタッフの方々にも安心して身体を預けていただけるように。

それが、バレエ安全指導者資格が目指す教師の姿です。

バレエの先生が時代の変化に取り残されないために

この資格のもう一つの特徴は身体的な知識だけでなく心理学や社会的背景についても学び、総合的に「指導するとはどういうことか」を考え、学んでいくことです。

バレエの世界、芸術の世界も海外の状況を見ると確実に変化が起きています。
   
特にハラスメントに関しては他人事ではなく、来年から新しく施行される法律もありますが、法律で定められるということは『これはバレエの指導だから』と言っても許されなくなるということです。

そうしたことも含め、スタジオを長く健全に運営していくために今の時代の流れをしっかりと掴んでおくことはとても重要なことになってきます。

バレエの世界がより社会的にも受け入れられ、認められるためには劇場で踊るダンサー達だけでなく、各地域でお教室を開き、バレエを広められている先生方のご協力なくしてはあり得ません。

世界の状況が刻々と変わっていく中で、これまでの常識が明日には全く変わっていることもある。
それらの変化に対応し、日々アップデートしていかなくてはならない。
これは指導者であれば当然のことです。

伝統、歴史を伝えると同時に、今生きているこの時代のことを学ぶ必要性もあるわけです。

バレエから学べることはバレエのテクニックだけではないこと。バレエを通じて社会と、そして世界と繋がることも出来ること。

ぜひ一緒にバレエの可能性についても学び合っていきましょう。

バレエの先生が健康であることが生徒にとっても大切なこと

バレエの先生方ひとりひとりが理想とするバレエの形は全く同じものではないでしょう。

けれど、バレエに対する愛情は皆同じだけ強くあるのではないかと思います。

本資格はバレエの先生が生徒の方に対して安全にバレエを伝えるために沢山の学びを得る場ですが、バレエの先生方がこれからもずっと現場に立ち、愛する生徒の方々との時間を育んでいくためにもぜひご自身の健康と安全についても学んで頂けたらと願っています。

最後に、これがもっとも私が望んでいるものでもありますが、この指導者資格がバレエを愛する人達にとってゆるやかで穏やかに支え合い励まし合えるコミュニティとなることを心から願っています。

お教室に通われる生徒の皆さん、そしてバレエを指導される先生方の健康が守られ、より良い環境のもとバレエと関わり心身が豊かに生きていける世界を目指して。

バレエ安全指導者資格主宰
中谷広貴