みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。
今回のコラムでは、SDAが立ち上げました「Ballet Medical Support Team」についての想いを書いてみたいと思います。
「芸術の名のもとに、苦しむ人を生まないために」― Ballet Medical Support Team 設立への想い
バレエは、美しく、尊く、そして厳しい芸術です。
私たちは、どこかで「苦しみを乗り越えてこそ本物だ」と教えられてきたのかもしれません。
でも、本当にそうだと思いますか?
私たちはこれまで、バレエ教育に携わる多くの指導者やダンサーの方々と出会い、現場の声を数多く耳にしてきました。
そして、本資格で学んでいただく中で最も多かった感想は、「もっと早く知りたかった」という声です。
「痛い」って、普通のことでしょうか?
「限界まで頑張る」ことしか、「無理をし続ける道」しか選んではいけないんでしょうか?
バレエは、スポーツと同様の運動負荷があります。
バレエのための身体はありません。
それがスポーツであれ、バレエであれ、同じ人間の身体で行うものだから当然のことです。
ジャンプ、回転、ターンアウト、ポワント、どれも関節や筋肉に強い負担をかける技術ばかりです。
それなのに、その身体を支えるための正しい知識は、芸術の名のもとに語られないまま、曖昧な経験則だけに委ねられてきました。
繰り返される無理な動きや我慢によって、心や身体に深刻な負担を抱えるケースが少なくありません。
にもかかわらず、バレエを教える側に、身体構造や障害予防、栄養やメンタルケアなどに関する医学的な知識を学ぶ機会は、ほとんど存在してきませんでした。
私たちは考えました。
「踊る人の身体を理解しないままに、“指導”という立場に立ってしまってはいないか」
「それが、無意識のうちに誰かの未来を狭めてはいないか」と。
スポーツの分野では、整形外科や内科、栄養学、心理学、トレーニング科学など、多領域の専門家が連携し、チームとなって選手の健康とパフォーマンスを支えています。
バレエもまた、同じように心身を酷使する芸術であるならば、それと同等のサポート体制があってしかるべきではないでしょうか。
「好きでやっているから」
「表現だから」
「スポーツと違い、芸術だから」
そういった言葉の裏で、心と身体を痛めてきた人たちが実際にいます。
【バレエダンサーもまた“Artistic Athlete”である】
そうした視点から、専門職の方々と連携し、あらゆる角度からバレエを支える仕組みをつくりたい。
そうして生まれたのが「Ballet Medical Support Team(BMST)」です。
BMSTは、単なる知識の提供にとどまりません。
・成長期の身体への配慮
・女性特有の健康問題
・食事とパフォーマンスの関係
・ケガを防ぐトレーニングと回復
・心のケア、ことばの影響
そういったテーマを、実際の指導現場に落とし込みながら、多方面の専門家たちと一緒に届けていきます。
特に、バレエの美意識は時として“正しさ”を押しつけてしまいがちです。
でも、どんなに優れたテクニックでも、その人の骨格や体質に合っていなければ、やがて障害の原因になってしまう。
その現実を、見ないふりはできません。
芸術を追求するには、健康はもちろん、まともに生きることを諦めなければならない。
その先にある人生の責任を、誰が負えるのでしょうか?
私たちは、芸術を守ることと、人を守ることを、分けて考えたくないのです。
「バレエをしていて良かった」
その言葉が、すべての人にとって心から言えるものでありますように。
私たちは、踊る人を“生涯守れる指導者”を増やすことが、この業界の希望になると信じています。
バレエが続けられること。
健康で、幸せでいられること。
その当たり前の未来を、一緒に築いていきましょう。
BMSTとともに、私たちはこれからも学び、届けていきます。
指導者の方も、保護者の方も、そして医療に関わる方にも。
この輪が広がっていくことを、心から願っています。
バレエ安全指導者資格®︎ 事務局
Ballet Medical Support Teamについてはこちらもご覧ください。
https://safedance.jp/bmst/