みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。

今回のコラムでは、「私たちが届けたいのは、バレエのための人生ではなく、バレエのある人生」というテーマでお話したいと思います。

この言葉は概念であり、ただの願いかもしれません。

バレエを本格的に学び始めると、「全てを捧げなければならない」という価値観や感覚に陥ってしまいがちです。
練習時間も、生活のリズムも、進学や仕事の選択すらもバレエ中心に組み立てる。
その姿勢は確かに真剣さの証であり、成長の原動力にもなるでしょう。しかし同時に、それが「自分をなくしてしまう」ことにつながる危うさを抱えているのも事実です。

本来、バレエは人生のすべてを飲み込むものではなく、人生と共に歩むものだと思います。
喜びや苦しみ、成長や停滞といった様々な局面に寄り添い、その人の人生を豊かにしてくれる存在です。私たちは、バレエに人生を「捧げる」のではなく、共に息をするかけがえのない友人のような存在であってほしいと思っています。

そのために大切なことは、自分を失わないこと。

指導する立場であればなおさらです。先生が自分をなくしてまでバレエに尽くしている姿を見れば、生徒はそれを「理想」と誤解してしまうかもしれません。
結果として、知らず知らずのうちに「バレエに身を捧げている姿が美しい」、「犠牲こそが美しい」という価値観を受け継いでしまう危険もあるでしょう。
確かにバレエダンサーになるには、道のりは険しく、そして努力だけでは乗り越えられない壁があることも事実です。

だとしても犠牲は、必要最小限でよいのです。
努力と犠牲を混同する必要はありません。
真剣であることと、犠牲を伴うこともまた別のものです。

努力は自分を成長させる行為ですが、犠牲は自分を削る行為です。
そこにはある種の達成感や満足感もあるかもしれません。
また自分の価値をその犠牲の数で測ってしまっているかもしれません。
犠牲を伴うことに依存する、それはもしかすると自傷行為といってもよいものかもしれません。

たとえば、怪我をしても、体調を壊しても舞台に立つということを「美談」とする空気が、バレエ界には長らく存在しています。
しかし本当は、健やかに踊れることがもっとも大切なことであり、目指すべき姿です。身体こそが最大の財産であり、長く続けるための条件なのです。

犠牲を払わなければならないのではなく、あなたに合ったやり方や向き合い方を知らないだけかもしれません。
今ある環境もまたご縁であり運ですが、その環境が絶対ではありません。

またとても難しいのは、一度その価値観になってしまうと、今のあなたの人生には、そのような犠牲を伴うことをもう必要としていないのにも関わらず、すべてにおいて、その価値観で物事を見てしまう、判断してしまう、行動をしてしまうことです。
ですので、一度そのような価値観の中でのバレエを過ごされた方は、こころのリハビリが必要なケースもあることを覚えておいてください。

「バレエのある人生」とは、バレエを通じて自分をより豊かにするものです。
そして豊かな心を持っているからこそ、他者をより深く理解できる人生でもあるのではないでしょうか。

豊かな人生と心を育んでくれるバレエのはずなのに、その反対になってしまってはいませんか?

時にバレエと距離を置くことがあっても、バレエは心の奥にあって決して消えることのない温かな火のような存在だと思います。
その火があれば、人生のどの場面にいても、バレエが帰る場所や支えになってくれるのです。

私たちは、そのようなバレエとの関係を次の世代へ伝えていきたいと願っています。
あなたの中にあるその火を、また次の世代に灯すように。

バレエは決してあなたを犠牲にして成り立つものではありません。
あなたの人生の中に、優しく、そしてやわらかく寄り添うもの。

その理解を広げていくことこそが、バレエを未来につなげる道だと私たちは信じています。

バレエ安全指導者資格®︎ 事務局