みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。
今回のコラムでは、バレエ指導現場における「理想」と「現実」について、そして本資格のスタンスについてお話したいと思います。
プロを目指すということ。
そして、そのプロの現場で本当に求められていること。
それは理想や夢の話だけではなく、非常に現実的な問題でもあります。
たとえば、ターンアウトの角度や反張膝、足首の深い底屈。
バレエの世界には、確かに「向いている身体」が存在します。
生まれつきの骨格や柔軟性、それに加えて身体のコントロール力。
それらを併せ持ち、日々のトレーニングを重ねられる人が、プロという舞台に立っていく。
それは否定できない現実です。
だからこそ、生徒も保護者も、そして私たち指導者自身も、
「その理想に少しでも近づけるなら」と、今日もたくさんの努力を重ねています。
でもその一方で、そうした強い想いがあるからこそ、反対に身体を壊してしまうことも、心が折れてしまうこともあります。
夢のために何かを犠牲にしなければならない。
そんな場面に直面したとき、私たちはどう生徒を支えればいいのでしょうか。
私たちの資格では、解剖学や発育発達、バレエが求める身体性について学びます。
その中でまず気づかされるのは、「向き・不向きがあること」
そしてそれ以上に大切なのは、「その人なりの段階やプロセスがある」という事実です。
プロを目指すにしても、趣味でバレエを楽しむにしても、
人にはそれぞれのスピードと道筋があります。
生まれ持った身体だけでなく、心の状態、育った環境、支えてくれる周囲。
それらすべてが複雑に絡み合いながら、その人の可能性を形づくっていく。
だからこそ、指導者には「一人ひとり違う」という視点が必要です。
同じ言葉が、ある生徒には励ましになり、別の生徒には重荷になることもある。
「頑張って」と言いたい場面でこそ、本当に必要なのは知識と想像力なのです。
本資格は、決して“理想”を否定するものではありません。
でもその理想を追いかける過程で、生徒が心や身体を壊さないようにするにはどうしたらいいか。
それを現実的に考え、学び、対話するための場所なのです。
医学的な知識、心理的な理解、バレエの身体性。
すでにわかっていることもたくさんあります。
けれど、指導者としてどう伝えるか、どこまで伝えるか。
その答えはいつも一つではなく、だからこそ悩むのです。
私たちは、そんな迷いや葛藤に真摯に向き合いながら、
現場で「今できるベスト」を考え続けています。
理想を諦めるのではなく、
生徒の身体と心を守りながら、その理想にどう近づいていくか。
この資格は、現場に寄り添う資格でありたい。
完璧な答えを与えるのではなく、共に考え、支え合うための土台でありたい。
そう願いながら、これからも「指導者とは何か」を問い続けていきます。
バレエ安全指導者資格®︎ 事務局