みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。

今回のコラムでは、「絵を描くこと」という例えを通じて、私たちバレエ安全指導者資格®︎が大切にしている“学び”についてお話ししたいと思います。

私たちの資格では、まず最初に「学びとは何か?」「なぜ学ぶのか?」という根本的な問いから講義を始めていきます。
人が学ぶ目的はそれぞれ異なります。けれど、“学ぶ”という行為そのものが持つ本質的な意味を理解することは、バレエを学ぶ生徒を支える立場にある指導者にとって、とても大切な視点だと私たちは考えています。

絵を描くとき、誰しもが「なんとなく」で描くことはできます。けれど、「こういう絵を描きたい」という明確なイメージを持ったとき、その描き方を知っているかどうかで、実現の可能性は大きく変わってきます。構図、陰影、色彩の理論など、技術や構造に関する知識を持つことで、表現の選択肢が広がり、描ける世界は豊かになるのです。

バレエの指導も、それと同じです。

解剖学や運動学、バイオメカニクスといった知識は、身体の構造やその使い方を理解する上でとても重要です。それらは、バレエという芸術を描くための“技法”にあたります。正しい知識は、怪我の予防にも、技術の向上にも、そして生徒に安心感を与えることにもつながります。

しかし、知識だけで「美しい踊り」が教えられるわけではありません。

なぜなら、「どんな踊りをしたいのか」「どんな身体表現を目指すのか」といった問いへの答えは、知識ではなく“人”に宿るからです。どんな絵を描くかを決めるのは、描く人自身。絵の描き方を知っていたとしても、最終的にどんな作品を生み出すかは、その人の感性や経験、そして意思に委ねられているのです。

バレエ指導において本当に必要なのは、知識の“伝達”ではなく、知識を“体験”とともに深め、それを生徒の身体と心に届くかたちで再構成して伝える力です。

たとえば、ターンアウトを教えるとき、「外旋させて」と伝えるだけでは、その場では出来ても、踊りの中ではなかなか活かされることがありません。なぜそれが必要なのか。どこで、どの瞬間にどのように感じるのが正解なのか。また、それがその踊りの中でどれほど重要なものなのか、そういった感覚の核心を、指導者自身が体験を通して理解していなければ、正確に伝えることはできません。

理想を掲げることは素晴らしいことです。しかし、その理想を実現するには、細部まで理解し、それを自分の言葉と身体で再現できる力が必要になります。そのためには、知識だけでなく指導者自身が「やってみた」経験が欠かせません。実際に動いてみて初めてわかること、教える中で生まれる発見こそが、指導の深みを生み出すのです。

知識と体験。そのどちらも欠かせません。
知識だけでは感覚に届かず、感覚だけでは言葉にできない。だからこそ、両方を持ち合わせた指導者が求められています。

構造を理解したうえで、さらに自由に飛び立つために。
そして、生徒が描こうとしている絵に寄り添えるように。

バレエとは、芸術であり、技術であり、そして人そのものです。
だからこそ、私たちは「知ること」と「感じること」、その両方を大切にしながら、学びを深め、指導という大切な時間をより豊かにしていきたいと願っています。

バレエ安全指導者資格®︎ 事務局