みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。

今回のコラムでは、「バレエは人生の象徴であってもすべてではない」をテーマに想いを書いてみたいと思います。

バレエの世界に身を置くと、日々の時間も意識もほとんどがバレエ一色になります。
レッスンに通い、舞台に立ち、自己研鑽を重ねていく。
その姿勢はとても尊く、周囲の方々にも感動や影響を与えていることだと思います。

ですが、だからこそ気をつけなければならないこともあります。
“バレエはあなたの人生の象徴であっても、人生そのもの”ではないということ。

プロのバレエダンサーだけでなく、バレエを習う方々も含め、身体や心のトラウマは、本人が気づかぬうちに蓄積されてしまうことがあります。

極度のプレッシャーの中で努力を続け、身体に無理を重ね、周囲の期待に応えようとする。
その過程で、ある時急に身体が動かなくなったり、感情の落ち込みが突然やってきたりするケースは少なくありません。
そして難しいことに、その原因が明確に見えない場合も多く、『自分の心が弱いからだ』とさらに自分を責めてしまう悪循環に陥ることもあります。

その背景には、本人の性格や精神的な資質、親や教師との関係、文化的な価値観などさまざまな要素が絡み合っています。

「もっと細く、もっと美しく、もっと完璧に」
「どんなに痛くても休むことなく踊り切らなければいけない」

そういった刷り込みが知らず知らずのうちに心身の健康を蝕んでいきます。

特に日本では、身体を酷使することや怪我に耐えることが美徳のように語られる場面も少なくありません。
しかし、身体や心が傷ついていく中で、自然な防御反応としてパフォーマンスが低下したり、身体が動かなくなるのは当然のことなのです。
これは“根性が足りない”わけではありません。
人間として”ごく自然な反応”だということを忘れないでください。

こうした悪循環を避け、健やかな形で踊り続けていくためには、早い段階で適切な心理的援助やサポートにアクセスすることがとても大切です。

良いパフォーマンスは、心身が健康な状態にあるからこそ発揮されるものです。
心が追い詰められ、疲弊しきっている状態では、どんなに技術があっても本来の輝きは出せません。

はっきりと言います。
無理は無理です。

無理をし続けることで、本当に無理になる日がやってきます。
ですから、長く踊っていくためにも、あなた自身が幸せに踊ることのできる環境づくりこそが最も重要なのです。

さらに問題なのは、こうした状況が作られる背景に指導者側の意識の問題もあるということです。
結果だけを追い求め、無神経に生徒の感情を無視して自己の欲望や名声を優先するような指導は、
ダンサー本人のパフォーマンスにも、その人生観にも大きな悪影響を及ぼします。

「あなたの人生にとって、バレエがすべてであるべきだ」と無言の圧力をかけてしまうことは、生徒の人生を狭めてしまうことにつながります。

よく考えてみましょう。
生徒やダンサーのパフィーマンスの低下につながるような行いや環境を放置することに、何の意味があるのでしょうか?
ダンサーのパフォーマンスが良いこと、そこに所属していたい、貢献したいと思う気持ちを掻き立てること。
特にそれがカンパニーであった場合、従業員の労働環境をよくすること、安全にすることは、管理者の責任ではないでしょうか?

バレエは、人生の象徴であることはあっても、人生そのものではありません。

舞台の輝きの外にも、生きる世界は広がっています。
踊ることが幸せであると同時に、踊らない時間にも幸福を感じられる自分であっていいのです。

私たちバレエ安全指導者資格®では、この視点をとても大切にしています。

講座では、ご自身のバレエとの向き合い方やこれからの人生について深く見つめ直す時間があります。
また、先生方には生徒一人ひとりの人生や価値観を尊重しながら導ける指導者となっていただけるよう、心理学をはじめとした幅広い知識を学んでいただいています。

QOL(生活の質)を高めること。
これが、現代に求められるバレエ教育の在り方だと、私たちは考えます。
それは日々、忙しくされている先生方自身にも当てはまることです。

バレエと共にある人生をより豊かに、健康的なものにするために。
舞台の上でも、日常生活でも、心からの笑顔で踊り、暮らしていけるように。

バレエが人生に寄り添うものであっても、人生を縛るものであってはならない。
それを忘れずに、未来のバレエ界をより健やかなものにしていきましょう。

バレエ安全指導者資格®︎ 事務局