みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。
『世界で一番安全なバレエスタジオを目指して』というテーマの第5回目。
今回は、本資格にて心理学の講義を担当してくださっています井梅由美子先生をご紹介いたします。
バレエスタジオの扉を開ける子どもたちは、キラキラとした憧れとともに、まだ未完成で繊細な「心」を携えてやってきます。
私たち指導者に課せられた使命は、その心に「自分はできる」という自信の種をまくことであり、決して「自分はダメだ」という否定の棘を刺すことではありません。
しかし、情熱があるからこそ、時に私たちは言葉の刃を無意識に向けてしまうことがあります。
なぜ、バレエに「4人の心理師」が必要なのか
「バレエ安全指導者資格®︎」が、合計4名もの心理専門職の講師を迎えている理由。
それは、プロの現場で最高のパフォーマンスを発揮するためにメンタルが重要であることはもちろんですが、それ以上に、現在のバレエ指導現場において、先生と生徒が互いに傷つけ合ってしまう不幸なケースが後を絶たないという現状があるからです。
身体の怪我は目に見えますが、心の傷は見えません。
見えないからこそ、私たちは専門的な知見を持って、その「見えない領域」を丁寧に扱う術を学ばなければならないのです。
「成功体験」という見えないフィルター
指導者の多くは、人一倍の集中力や身体能力、そして「努力できる才能」という、周囲に秀でるものを持って歩んできた方々です。
その輝かしい成功体験は指導の糧になりますが、時に「見えないフィルター」となって、目の前の生徒を歪めて映してしまうことがあります。
指導者にとっての「当たり前」は、子どもにとっての「当たり前」ではありません。
自分ができるようになったプロセスをそのまま生徒に当てはめ、「なぜできないの?」と問い詰めることは、生徒の個性を無視するだけでなく、その人格を否定するきっかけにもなりかねません。
井梅由美子先生が説く「発達心理学」、また「発達障害」の講義を受けることで得られる視点は、この「自分と他者は違う」という当たり前で、かつ最も忘れがちな事実を、私たちの心に深く再定義してくれます。
「発達段階」という名の安全網
子どもは決して「大人のミニチュア」ではありません。
幼児期、児童期、青年期と、それぞれの段階で達成すべき心理的・身体的な発達課題が存在します。
例えば、ある年齢の子どもに大人と同じレベルの客観的な自己分析を求めることは、構造的に無理があります。
それは「やる気」の問題ではなく、脳や心がまだその段階に達していないだけなのです。
これを知るだけで、指導者の言葉は劇的に変わります。
「なぜできないの?」という苛立ちは、「今はできなくて当たり前。今まさに、その能力を伸ばそうとしている最中なんだね」という、慈愛に満ちた温かな眼差しへと変化します。
この「待つことができる指導者」の存在こそが、生徒にとっての最大の安全網(セーフティネット)となります。
知識という名の「愛」
「愛を持って厳しく接する」という言葉がありますが、それは単に自分の情熱を相手にぶつけることではありません。
本当の愛とは、相手を正しく理解しようと努めることではないでしょうか。
心理学を学ぶことは、生徒という一人の人間を、その背景や発達のプロセスを含めて丸ごと受け入れる準備をすることです。
井梅先生の穏やかな講義を通じて得られる知見は、あなたの中に「心の安全基地」としての指導者像を確立させてくれるでしょう。
先生が安定していれば、生徒は失敗を恐れずに挑戦し、表現の翼を大きく広げることができます。
心を守ることは、才能を守ること。
その確信を持って今日もスタジオに立つ。
そんな指導者が増えることで、日本のバレエ界はもっと豊かで、もっと優しい場所になると私たちは信じています。
世界で一番安全なバレエスタジオを、ぜひあなたの手で。
バレエ安全指導者資格®︎ 事務局

井梅由美子 先生
東京未来大学こども心理学准教授
公認心理師
臨床心理士
【担当講義】
1)指導者の自己理解とメンタルケア
2)子どもの発達心理学
3)発達障害への理解と支援