みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。

今回は、『学ばなくてもなれる日本で、あえて私たちが「学ぶこと」を選ぶ理由。』というテーマで、本資格を創設して5年の間に、私たちが出会った素晴らしい先生方についてお話したいと思います。

ここ数回のコラムでは、バレエ教師という職業に対して、あえて厳しい言葉を選び、投げかけてきました。
それは、バレエという美しくも過酷な芸術が、一歩間違えれば生徒の心身に一生消えない傷を負わせてしまうという危機感、そして実際にそのような指導を受けた生徒たちの存在があるからです。

しかし、「バレエ安全指導者資格」を創設し、全国から集まる先生方と出会う中で、私たちは日本のバレエの世界に大きな希望も見出しています。
それは、生徒の方々に対して誠実で、熱く、そして何よりも「謙虚な」先生方の姿があったからです。

「不安」は、愛情と責任感の裏返しである

資格を創設してまず驚いたのは、想像以上に多くの先生方が「自分の指導はこれでいいのだろうか」という深い不安を抱えていらしたことです。

長年プロとして舞台に立ち、輝かしい経歴を持つ先生であっても、いざ「教える」立場になると、自分の経験則だけで生徒の体を見ることへの恐怖を感じている。それは、裏を返せば生徒の未来を真剣に想っている証拠だと思います。

安全や安心を願う気持ちが強ければ強いほど、正解のない指導の現場で孤独になり、迷いが生まれます。
私たちは講義を通じて解剖学や心理学、教育学といった「科学的根拠」を提供していますが、それは単なる知識の詰め込みではありません。
先生方が抱える「漠然とした不安」を、根拠に基づいた「確かな自信」に変えるためのプロセスです。

キャリアを問わず響き合う「学ぶ姿勢」

特に私たちの心を震わせるのは、受講される方々の多様なバックグラウンドと、そこに共通する「志」の高さです。

これから指導者の道を歩もうとする若い世代の方々が、「踊ることと教えることは別物である」と自ら一線を画し、学びに来られる姿勢には、目を見張るものがあります。現役ダンサーとしての華やかなキャリアに甘んじることなく、指導者としての責任を真正面から受け止めようとするその誠実さは、これからの日本のバレエ界の希望そのものだと実感しています。

一方で、その対極にいるような大ベテランの先生方もまた、私たちの元を訪れてくださいます。
バレエ団で長くプリンシパルとして活躍し、指導歴も20年、30年を超え、さらにはバレエ団での指導も任されている。
そんな、誰もが敬意を払うような立場にある先生方が、「自分の指導に、まだ足りないものがあるのではないか」と不安を感じ、一受講生として学ばれる姿。

その謙虚な想いの尊さに触れるたび、私たちは、畏敬の念で胸がいっぱいになります。
実績も名声もある方が、自らの指導をゼロから見つめ直そうとする。
その勇気こそが、本当の意味での「指導者の強さ」なのだと実感しますし、何よりも追える背中があるということが、私たちに計り知れない勇気とパワーを与えてくれます。

日本のバレエ界という特殊な環境

周知の通り、日本においてバレエ教師になるための公的なハードルは存在しません。
今日から看板を掲げれば、誰でも「先生」になれます。
この自由さは日本のバレエ文化を広めた一因ではありますが、同時に指導の質のバラつきや、身体を壊しかねない無理な指導を放置する土壌にもなってきました。

この「学ばなくても指導者になれる」環境下で、あえて時間と費用を投じ、自らの指導を再構築しようとする先生方。
その先生方に共通しているのは、やはり圧倒的な「謙虚さ」ではないでしょうか。

成長を止める「経験」と、成長を促す「謙虚さ」

「私はこう教わってきた」
「現役時代はこれで上手くいった」

過去の成功体験は、時に新しい学びを阻む壁になります。
しかし、私たちの資格を取得しに来られる先生方は、その壁を自ら壊して現れます。

「自分の知識がアップデートされていないことに気づきました」
「生徒の体を守るために、もっと知らなければならないことがあった」

そう語る先生方の姿は、決して自信がないわけではありません。
むしろ、「自分が何を知らないかを知っている」という、指導者として最も高度で誠実な知性を持たれています。

謙虚であるということは、自分を卑下することではなく、常に生徒にとっての最善を追求し続ける「開かれた姿勢」を指します。
この姿勢こそが、バレエスタジオを単なるテクニック習得の場から、生徒が心から安心し、伸び伸びと自分を表現できる「安全な居場所」へと変化させていくのだと思います。

不安を自信に変え、その先にある「楽しさ」へ

安全な指導は、決して「守り」の姿勢ではありません。
むしろ、身体の仕組みやリスクを正しく理解しているからこそ、もう一歩攻めることのできる指導が可能になります。

「これ以上やったら怪我をする」という境界線が明確になっているからこそ、先生は迷いなく判断し、そのタイミングで生徒の背中を確実に押してあげることができます。
生徒もまた、先生への信頼があるからこそ、恐れずに新しい動きに挑戦できます。
その先に待っているのは、怪我の恐怖に怯えるレッスンではなく、心身の充実を伴った、バレエ本来の「踊る喜び」です。

これまで厳しい言葉を届けてきた私たちですが、今、日本のバレエ界の未来には大きな希望を感じています。
なぜなら、キャリアの長短に関わらず、自らの指導を謙虚に見つめ直し、学び続ける先生方がこれほどまでに多く存在していることを知ったからです。

私たちはこれからも、そんな志ある先生方の伴走者であり続けたいと考えています。
安全という土台の上に、より美しく、より豊かなバレエの華が咲き誇ることを願って。

日本全国、そして世界へ。
安全なバレエ環境と、生徒が心から安心し、伸び伸びと成長できる指導を志す先生方との出会いを、私たちは心待ちにしております。

バレエ安全指導者資格®︎ 事務局

本資格各コースを修了された先生方
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