みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。
今回は、『勇気ある声と、守られるべき心理的安全性』というテーマでお話をしていきたいと思います。
私たちの願いは、社会とバレエ界をつなぎ、子どもたちが安心できる環境を作ることです。
そのため、あえて先生方には耳の痛いお話になるかもしれません。
しかし、時代の変化による「価値観のズレ」や、世間がバレエ界の常識に抱く「違和感」を、少しでもなくしていくきっかけになれば幸いです。
「NO」は弱さではない
バレエのレッスンの中で、「NO」という言葉はタブーになっていませんか?
「痛い」
「怖い」
「できない」
これらを口にすることは、やる気がない証拠、あるいは甘えと見なされ、「黙ってやりなさい」「痛いのは生きている証拠だ」といった精神論で封殺されることが美徳とされてきました。
指導者の指示は絶対であり、生徒は自らの身体感覚や感情を押し殺してでも、それに従うことが求められてきたのではないでしょうか?
しかし、私たちは今、その「沈黙の文化」がどれほど多くの怪我や、心の後遺症を生んできたかを直視しなければなりません。
「NOと言える空気」があるかどうか。
これは単なる優しさの問題ではなく、生徒の心身を守り、長く踊り続けるための安全管理の根幹に関わる問題だと、私たちは考えています。
「怖い」の裏にある「理由」を解き明かす
新しいパや難易度の高い技に挑む際、生徒が口にする「怖い」という言葉。
それを単なる「弱音」や「やる気の欠如」と断じ、「気合で乗り切れ」と精神論で押し通すことは、指導者としてあまりに無責任であり、危険です。
なぜなら、その恐怖心は、本人の意思とは無関係に脳と身体が発している「まだその動きに対する準備が整っていない」「成功のイメージが描けていない」という、極めて正確な警告だからです。
恐怖で筋肉が萎縮し、強張った状態で無理に体を動かせば、大怪我を招くことは火を見るよりも明らかです。
「怖い」と言える環境があれば、指導者はそこで一度立ち止まり、「何が不足しているのか」「どの段階まで戻れば安心できるか」を冷静に因数分解することができます。
つまり、生徒の「NO」を、私たち指導者の側が受け入れることは、彼らの未来を守るための「安全装置」として機能するのです。
「体調が悪い」を言わせない無言の圧力
また、「体調不良」や「痛み」を訴えることに対するハードルも、現状としては依然として高いのではないでしょうか?
「休むと置いていかれる」
「先生に嫌な顔をされる」
そんな不安から、高熱をおしてレッスンに来たり、身体の痛みを隠して踊り続けたりする子どもたちが後を絶ちません。
しかし、痛みを我慢して踊ることが、本当に「強さ」だと思いますか?
プロフェッショナルなダンサーに必要なスキルは、無茶をすることではなく、自分の身体の状態を正確に把握し、ベストなコンディションを保つ「自己管理能力」です。
子どもの頃から「痛くても言うな」と教え込まれれば、彼らは自分の身体の悲鳴に鈍感になり、ダンサー生命を縮める結果を招きます。
「今日は足が痛いです」
「少し休ませてください」
そう言える環境こそが、彼らが自分の体を大切にし、責任を持って管理する姿勢を育みます。
拒否は「対話」の始まり
「NO」を許容してしまえば、子どもがわがままになるのではないか。
あるいは、甘やかすことになるのではないか。 そう懸念される指導者の方も、少なくないでしょう。
しかし、誤解しないでいただきたいのは、「NO」を受け入れることは、決して子どもの言いなりになることではありません。
それは、指導者と生徒との間に生まれる、真剣な「対話」のスタート地点なのです。
「どうして怖いと感じるのか」
「具体的にどこが痛むのか」
指導者がまず耳を傾け、その理由を深く聞き、解決策を一緒に考える。
そのプロセスを通じて、生徒は「自分の感覚は間違っていないのだ」「先生は自分を守ろうとしてくれているのだ」という、揺るぎない信頼感を抱きます。
この「心理的安全性」という土台があって初めて、子どもたちは失敗を恐れずに高い壁に挑戦し、本当の意味での強さを身につけていくことができるのです。
一方的な命令ではなく、互いに言葉を交わし、コミュニケーションを取り合える関係性。
それこそが、真のプロフェッショナリズムであり、自立した人間を育てるための最短ルートであると、私たちは信じています。
「NO」と言えることが、本当の「YES」を守る
指導者の皆様にお聞きしたいのです。
あなたの教室は、生徒が震える声で発した「NO」を、温かく受け止める場所でしょうか。
それとも、その言葉を飲み込ませるような、冷たい緊張感が張り詰めているでしょうか。
「NO」と言える空気を作ることは、決して逃げ道を増やすことではありません。
それは、彼らが心からバレエを愛し、万全の状態で「YES」と言って踊り続けるための、命綱を用意することなのです。
それが、子どもたちの心身を守り、ひいてはバレエという芸術を、次世代へ健やかに繋いでいくための最も確かな一歩となるはずです。
バレエ安全指導者資格®︎ 事務局
◉バレリーナのセルフチェックガイド
https://safedance.jp/bmst/selfcheckguide/
◉ジュニアバレリーナと指導者のための婦人科ガイド
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◉バレエメディカルサポートチーム
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◉安全指導のプロフェッショナルになるためのバレエ安全指導者養成スクール
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