みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。

【選ばれるお教室の条件】をテーマとした連続コラムの第二回目です。
今回は『週に1回しか来ないと嘆く前に。』というタイトルでお届けいたします。

「週1回のレッスンじゃ、現状維持が精一杯ですよ」
「もっと頻度を上げないと、上手くなりませんよ」

伸び悩む生徒や、忙しくて通うのがやっとの生徒に対し、このような言葉をかけたり、あるいは心の中でため息をついたりしたことはありませんか?
私たち指導者は、幼少期から「毎日稽古すること」を当たり前として生きてきました。
だからこそ、週に1回しか顔を見せない生徒に対して、「本気度が足りない」「やる気がない」というレッテルを無意識に貼ってしまいがちです。

しかし、この「頻度に対する温度差」こそが、生徒がお教室を去ってしまう大きな原因の一つともいえます。
今回は、指導者が見落としがちな「週1回の重み」について、生徒側の視点から深く掘り下げてみましょう。

氷山の下にある「見えない努力」

プロを目指す者にとって、週1回のレッスンは確かに「不十分な練習量」かもしれません。
技術の習得には反復が必要だからです。 しかし、視点を変えてみてください。
日々、仕事や家事、育児や介護、あるいは厳しい受験勉強に追われている一人の人間にとって、その「週1回」はどういう意味を持つでしょうか。

想像してみてください。
残業を必死で切り上げ、夕食の準備を前倒しで終わらせ、家族や職場に頭を下げて時間を調整する。
疲労で重たい身体に鞭を打ち、電車に揺られてスタジオへ向かう。
あなたの目の前に立っているその生徒は、そこに来るまでに、すでに膨大なエネルギーを使っているのです。

忙しいスケジュールの隙間をこじ開け、ようやく捻出した「たった1時間半」
それは、暇だから来たのではありません。「他の何かを犠牲にしてでも、ここに来たかった」という、情熱の結晶なのです。

スタジオは「人生のオアシス」

なぜ、彼らはそこまでしてスタジオに来るのでしょうか?
もちろん「上手くなりたい」という気持ちもあります。
しかし、それ以上に大きな理由があります。

それは、スタジオが「日常の役割から解放される、唯一の場所」だからです。

一歩外に出れば、生徒の皆さん「社員」であり、「お母さん」であり、「受験生」であったりします。
常に社会的な役割と責任、プレッシャーを背負って生きています。
けれど、スタジオの扉を開け、レオタードに着替えた瞬間、彼らはただの「自分」に戻れるのです。

美しい音楽に身を委ね、鏡の中の自分と向き合う時間。
そこには、仕事のトラブルも、家庭の悩みも存在しません。
その時間は、単なる運動の時間ではなく、すり減った心を潤し、翌日からまた厳しい日常を戦うために、自分自身を取り戻すための「人生のオアシス」なのです。

「週に1回のバレエがあるから、また1週間頑張れる」

多くの大人の生徒たちが、そう口を揃えておっしゃるでしょう。
彼らにとってバレエは、技術向上のための訓練である以前に、メンタルヘルスを支える「命綱」のような存在なのです。

価値観の押し付けが「聖域」を壊す

そんな思いでスタジオに来た生徒に対し、指導者がプロ目線の価値観だけで接してしまったら、どうなるでしょうか。

「週1回じゃ意味がないわよ」
「先週やったこと、もう忘れたの?」

この言葉は、指導者にとっては愛のある叱咤激励のつもりかもしれません。
しかし、生徒にとっては「あなたが必死で守ってきたこの時間は、無駄なものだ」と宣告されたも同然です。

日常を生き抜くための「オアシス」で、さらに自分の努力や存在意義を否定される。
これほど悲しく、心が折れる瞬間はありません。

「ここでは私の事情は理解されない」「私のバレエへの愛は、先生には届かない」と感じた生徒は、あなたにその想いを伝えることなく、静かにその場を去っていきます。

「その1回」の質を高める指導者へ

私たち指導者に必要なのは、生徒の出席頻度を嘆くことではありません。
「貴重な週1回の時間を、どれだけ濃密で幸せなものにできるか」に全力を注ぐことです。

たとえ技術的な進歩はゆっくりでも、

「今日のレッスンで身体が軽くなった」
「音楽と一体になれて感動した」
「先生に会って元気がもらえた」

そう感じて帰ってもらうことは十分に可能です。
技術的な到達度だけが、バレエの価値ではありません。
「その時間を過ごすこと」そのものが、彼らにとってはかけがえのない価値なのです。

「忙しい中、よく来てくれましたね。今日はこの90分を楽しみましょう」

もし貴方が、扉を開けた生徒をそんな心持ちで迎えることができたなら、その生徒にとってあなたのお教室は、決して手放したくない「人生の一部」になるはずです。

「週1回しか来ない」のではなく、「大切な週1回を、私の教室に預けてくれている」

そう意識を変えるだけで、あなたの指導の言葉や空気感は、劇的に優しく、そして力強いものへと変わっていくでしょう。
あなたのバレエが、だれかの人生にとってなくてはならないオアシスになる。
そんなバレエの世界をぜひ一緒に作っていきましょう。

バレエ安全指導者資格®︎ 事務局

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