藤後悦子先生|心理学から考える「世界で一番安全なバレエスタジオ」
INSTRUCTOR PROFILE — PSYCHOLOGY, CHILD DEVELOPMENT & SAFE SPORT

世界で一番安全な バレエスタジオに向けて。 講師紹介|心理学 藤後悦子先生

バレエで守るべきものは、身体だけではありません。失敗を恐れず挑戦できること、痛みや不安を言葉にできること、指導者から人格を否定されないこと。そして、先生自身が感情や権限の使い方を振り返れること。バレエ安全指導者資格®︎で、その土台となる心理学を担当してくださっているのが藤後悦子先生です。

東京未来大学教授 藤後悦子先生 BALLET SAFE TEACHER INSTRUCTOR
心理学・スポーツハラスメント・コーチング 講師

藤後 悦子 先生 ETSUKO TOGO, PhD

  • 東京未来大学 こども心理学部 こども心理学科心理専攻 教授
  • 博士(学術)/筑波大学
  • 公認心理師・臨床心理士・臨床発達心理士

臨床心理学・コミュニティ心理学・発達心理学を専門に、子育て、学校、スポーツ、地域という、人が社会の中で育ち暮らす場を研究・実践のフィールドとしてこられた藤後先生。特にスポーツ現場では、ハラスメントや心理的マルトリートメント、指導者・保護者と子どもの関係などを長年研究されています。

PSYCHOLOGY 公認心理師
CLINICAL 臨床心理士
DEVELOPMENT 臨床発達心理士
CHILD & SPORT 保育士/幼少年体育指導士
01

WHY PSYCHOLOGY IN BALLET EDUCATION?

なぜ、バレエ指導者が
「心理学」を学ぶのでしょうか

みなさま、こんにちは。セーフダンスアソシエーションです。

『世界で一番安全なバレエスタジオを目指して』。講師紹介シリーズの今回は、心理学の講義を担当してくださっている藤後悦子先生をご紹介します。

バレエは身体を使う芸術です。

けれど、その身体を動かす人には、感情があります。失敗への不安、先生に認められたい気持ち、コンクールで選ばれなかった悔しさ、仲間との比較、怪我への恐怖、進路への迷い。

レッスンで交わされる一つの言葉も、指導者の表情も、クラスの中の人間関係も、学びの体験に影響します。

安全な指導とは、
怪我を防ぐことだけではありません。

「痛い」と言える。「分かりません」と質問できる。失敗しても人格を否定されない。先生に相談できる。そして必要なときには別の大人にも助けを求められる。

そうした心の安全まで考えるために、心理学はバレエ指導者にとって重要な学びの一つです。

02

PEOPLE, RELATIONSHIPS & COMMUNITY

藤後先生が見つめてきた、
「人」と「環境」の関係

藤後先生の専門は、臨床心理学、コミュニティ心理学、発達心理学です。

大学の研究者紹介では、ご自身の研究テーマを「社会的子育て」「学校臨床」「スポーツ」「地域づくり」という大きな領域から捉え、実体験・研究・臨床を重ねながら活動されていることが紹介されています。

学校や保育の現場では、スクールカウンセラー、学生相談、保育相談、巡回相談などを経験。スポーツの研究では、子どもの習い事の現場で目にしたハラスメントをきっかけに研究を始め、日本だけでなく海外でも調査を行ってこられました。

CURRENT SPECIALTY

東京未来大学の最新教員情報では、現在の専門分野を「臨床心理学」とし、キーワードとして、子育て支援、学校臨床、メンタルトレーニング、コミュニティ心理学、スポーツハラスメント、ペアレンティングが掲載されています。

人だけを見るのではなく、
その人を取り巻く関係や環境まで見る。

この視点は、バレエ教室にも非常に重要です。

「この子のメンタルが弱い」で終わらせるのではなく、指導者の言葉、クラスの文化、保護者との関係、競争環境、練習量など、周囲の環境も含めて考える。その視点を藤後先生の講義から学びます。

CURRENT PROFILE

藤後悦子先生
プロフィール

2026年8月時点で確認できる東京未来大学の公開情報を中心に整理しています。

現在の所属
東京未来大学 こども心理学部 こども心理学科心理専攻 教授
学位
博士(学術)・筑波大学
専門
臨床心理学、コミュニティ心理学、発達心理学
主な資格
公認心理師、臨床心理士、臨床発達心理士、保育士、幼少年体育指導士ほか
研究実践領域
社会的子育て・保育カウンセリング、スポーツハラスメント(教育マルトリートメント)、通信制高校の生徒支援・不登校(ひきこもり)支援、特別支援児の支援、多汗症支援など
大学での主な担当科目
子育てカンファレンス、教育・学校心理学B、心理的アセスメントなど
2024 東京未来大学「授業方法ベストティーチャー賞」
2025– 東京都立図書館協議会委員(学識委員)
03

SPORTS HARASSMENT & PSYCHOLOGICAL MALTREATMENT

スポーツハラスメントの研究から、
バレエ指導を見つめ直す

藤後先生の研究実践領域の一つに、スポーツハラスメント、そして教育マルトリートメントがあります。

子どものためを思っている。強くしてあげたい。勝たせたい。上達させたい。

大人の動機が善意であっても、指導の方法によっては、子どもへ強い心理的負担を与えることがあります。

藤後先生は、地域スポーツにおける勝利至上主義と心理的マルトリートメント、指導者・保護者が留意すべきスポーツハラスメント、ジュニア期のスポーツ環境などについて研究・発信してこられました。

WHY IT CONNECTS TO BALLET

バレエにも、コンクール、配役、留学、進路、教師への強い権威性など、子どもが「先生に嫌われたら困る」と感じやすい場面があります。だからこそ、言葉の内容だけではなく、断れるか、質問できるか、相談できるかという関係性まで見る必要があります。

「厳しい指導か、優しい指導か」ではなく、
その指導は子どもの尊厳を守っているか。

伝統を否定するのではなく、今の心理学や子どもの安全という視点から、受け継ぐものと見直すものを考える。

藤後先生の講義は、そのための「鏡」を指導者に渡してくださる時間だと感じています。

LECTURES IN THE BALLET SAFE TEACHER PROGRAM

藤後先生から学ぶ、
心理学の3つのテーマ

心の問題を「気合」や「性格」で片づけず、指導環境・関係性・コミュニケーションから考えます。

ダンサーのメンタルヘルス

不安、ストレス、自己評価、競争、怪我、進路など、ダンサーが抱えやすい心理的負担を理解し、指導者が気づける変化と専門家へつなぐ境界を学びます。

ハラスメント

指導者と生徒の力関係、善意の指導が心理的負担へ変わる境界、スポーツハラスメントや教育マルトリートメントの視点から、安全な指導環境を考えます。

コーチング

命令して動かすだけではなく、生徒自身が考え、言葉にし、自分の成長へ参加できる関係づくりとコミュニケーションを学びます。

04

THE TEACHER IS PART OF THE ENVIRONMENT

まず、指導者自身の状態を
理解することから

心理学を学ぶとき、つい「生徒の心をどう理解するか」ばかりに目が向きます。

けれど、教室という環境の中には、指導者自身も存在しています。

焦り、疲労、怒り、不安、完璧主義。「発表会までに仕上げなければ」「結果を出さなければ」というプレッシャー。指導者の心理状態や行動は、クラスの雰囲気や、生徒が質問・失敗・相談をしやすいかどうかに影響します。

だからこそ、まず自分自身の状態に気づく。

豊かな時間を生徒へ届けるために、
先生自身にも、整える時間が必要です。

これは、指導者に常に穏やかでいることを求める話ではありません。

自分が今どんな状態なのかを知り、感情をそのまま子どもへぶつけず、必要なら休む・相談する・他者の助けを借りる。

「先生も一人の人間である」という前提から、安全な教室づくりを考えます。

05

FROM DANCER TO EDUCATOR

「踊れること」と、
「教えられること」は同じではない

バレエ教師の多くは、長い時間をダンサーとして過ごしてきました。

自分自身の身体で覚え、自分自身が厳しいレッスンを乗り越え、自分自身が舞台で結果を出してきた。

その経験は、指導者にとってかけがえのない財産です。

一方で、「自分はこれで成長した」ことが、目の前のすべての子どもに同じように適切とは限りません。

EDUCATOR’S QUESTION

「私なら耐えられた」ではなく、「この子にとって、この伝え方はどう届いているだろう」。自分の経験を正解として再現するのではなく、目の前の生徒に合わせて問い直すことが、ダンサーから教育者へ役割を変える大切なプロセスです。

指導者の役割は、
自分の光を再現させることではなく、
生徒自身の光が育つ環境をつくること。

RESEARCH & PUBLIC EDUCATION

スポーツ・子育て・学校を、
心理学から社会へつなぐ

研究成果を論文だけに留めず、保護者・指導者・地域へ届ける活動も続けられています。

BOOK / 2019

『スポーツで生き生き子育て&親育ち』

スポーツを切り口に、子どもの遊び・生活・競技スポーツと親子関係を考える編著。東京未来大学の研究者紹介では、こども環境学会論文・著作奨励賞受賞作として紹介されています。

RESEARCH & PRACTICE

スポーツハラスメント防止

ジュニアスポーツにおける心理的マルトリートメント、指導者ハラスメント、保護者との関係、発達に課題のある子どものスポーツ参加などを継続的に研究されています。

06

TOWARD A PSYCHOLOGICALLY SAFE BALLET STUDIO

身体だけでなく、
心まで安全なバレエスタジオへ

「世界で一番安全なバレエスタジオ」とは、誰も落ち込まない場所でも、叱られることのない場所でもありません。

難しいことへ挑戦すれば、不安になる日もあります。注意を受けることも、失敗することもあります。

大切なのは、その中でも人格を傷つけられず、分からないと言え、失敗から学び、困ったときには助けを求められること。

厳しさと安全は、対立するものではありません。
高い目標ほど、安全な関係の上に置く。

藤後先生から心理学を学ぶことは、生徒の心を「操作する方法」を学ぶことではありません。

人の心は一つの正解で説明できないことを知り、自分の指導を振り返り、生徒の声を聞き、必要なら心理の専門家へつなぐ。

その判断力を、一人ひとりの指導者が持つこと。

身体だけでなく、心も健やかに育つスタジオを、日本中に増やしていきたいと考えています。

LEARN WITH PSYCHOLOGY PROFESSIONALS

心理学を、
毎日の指導判断へ

「メンタルが弱い」で終わらせず、子どもの心と環境を考えられる指導者へ。

BALLET SAFE TEACHER SCHOOL

バレエ安全指導者養成スクール

心理だけでなく、整形外科、婦人科、栄養など各領域の専門家とともに、子どもの身体・心・生活を守るための判断力を横断的に学びます。

  • ダンサーのメンタルヘルス
  • ハラスメントと心理的安全
  • コーチングとコミュニケーション
  • 成長期の心身への配慮
  • 心理専門職へつなぐ判断

PROFILE SOURCES

プロフィール確認に使用した公開情報

本記事のプロフィールは、2026年8月時点で確認できる東京未来大学の教員紹介・研究者業績情報・研究者紹介等をもとに整理しています。資格は大学が公開している主要項目を掲載し、担当講義の説明はバレエ安全指導者資格®︎での講義テーマをもとに指導者向けに要約しています。心理的不調やハラスメントの個別評価・診断・治療は心理・医療等の専門職の領域であり、バレエ指導者が単独で診断するものではありません。

身体を守るのと同じように、
心を守れる指導者へ。

心理学を学ぶことは、生徒を思い通りに動かす方法を手に入れることではありません。自分自身と相手をより深く理解し、言葉や権限の使い方を振り返り、安心して挑戦できる関係をつくる。そのための学びを、藤後悦子先生から届けていただいています。

セーフダンスアソシエーション