みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。
今年もパルテノン多摩にて開催されました「Ballet Connection in Tokyo 2026」において、私たちのBMST(Ballet Medical Support Team)は公式メディカルサポーターとして参加いたしました。
会場では専門家によるセミナーを実施し、ロビーでは姿勢&ターンアウトチェック体験会を開催いたしました。
会場およびオンラインでご参加くださった皆様、そしてこの貴重な機会を与えてくださるBallet Connection様に、心より御礼申し上げます。
今年のテーマは【踊れる身体】。
セミナーを通じて共有したのは、子どもたちの「バレエが大好き」という想いを決して損なわないための、健康と安全への配慮の重要性です。
子どもを取り巻く大人の「共通の課題」
今回、特に胸を打たれたのは、振付家・ダンサーであり新体操指導者でもある杉本音音先生の率直な体験談でした。
摂食障害に至るまでの葛藤、渦中での視界、回復までの道のり、そして現在に至るまでを、包み隠さず語ってくださいました。
しかし、これは決して「一人のダンサーの個人的な問題」ではありません。
バレエ界にはいまだに「過度な痩身=美徳」という誤った価値観が根強く残り、現場の空気を支配しています。
さらにSNSやYouTubeの時代においては、注目を集めるために身長や体重といった数値を過度に強調する投稿も少なくありません。
杉本先生の「マイナスへの変化は一瞬でも、元に戻すには途方もない時間がかかる」という言葉は、非常に重く心に響きました。
子どもたちをその危険な渦中へと追い込む前に食い止める防波堤となるのは、他でもない、私たち大人や指導者、そしてダンサー自身です。
「美しい=細い」という価値観を、どのように手放し、更新していくのか。
その投稿の先には、周囲の目を気にする年齢であり、まだ良し悪しの判断がつかない子どもたちがいるという事実を、業界に関わる人だけでなく、観る側である観客も含めて、深く理解しておく必要があります。
「経験論」から「科学・医学」に基づく指導へ
公認スポーツ栄養士・伊藤あゆみ先生による栄養学の講義、そしてメディカルチーム医師による多角的な視点は、慣習や気合い、根性、勘といった根拠のない指導の時代がすでに終わっていることを、明確に示していました。
SNSに溢れる加工されたイメージや、「体重」という単一の数値に価値を置くのではなく、本人が動きやすいか、健康に踊れているかという、身体の実態に基づいた評価へと視点を転換すること。
それが、これからの指導に求められる在り方です。
エネルギーを最も必要とする成長期やトレーニング期に、十分なエネルギーが確保されなかった場合、身体にはさまざまな不調が生じます。
特に女性においては、無月経が将来の人生にまで大きな影響を及ぼす可能性があり、結果としてダンサーとしての寿命そのものを縮めてしまうことにもつながります。
伊藤先生が伝えてくださった「動くための食事」という考え方は、踊り続けるための身体を守るうえで、欠かすことのできない基礎知識です。
私たちが強い憧れを抱くローザンヌ国際バレエコンクールをはじめ、世界最高峰の現場では、すでにこの問題に真摯に向き合い、明確な基準づくりが進められています。
芸術性や結果を追求する以前に、身体と健康を守ることが最優先であるという認識が、共通言語となっているのです。
私たち大人の役割は、成果を出させること以前に、大切な子どもたちの身体と未来を守ること。
それは本来、特別な意識ではなく、当たり前の責任として持たれるべきものです。
芸術の世界には明確な「正解」や「基準」がないからこそ、指導現場が科学・医学的知見を当然の基準としてアップデートしなければ、子どもたちの「踊れる身体」を守ることはできません。
これからの時代に求められるのは、情熱や経験に、確かな知識と責任を重ねた指導です。
「良かれと思って」の残酷さ
杉本先生が語られた「周囲の接し方」は、指導の現場において極めて重要な示唆を含んでいました。
善意から発せられた言葉や助言が、「良かれと思って」であるがゆえに、結果として当事者を深く追い詰めてしまうことがあるという現実です。
指導者が持つ影響力は、本人が想像する以上に大きく、不用意な励ましや評価、安易なアドバイスが、心身の限界にある人にとっては、逃げ場を奪う刃になることもあります。
この悲劇を防ぐために必要なのは、共感や熱意だけではありません。
指導者自身が正しい知識を持ち、異変を察知し、必要に応じて速やかに専門家へと繋ぐことのできる「連携ルート」を確保していること。
それこそが、真に安全な指導体制と言えます。
経験則や個人的な成功体験だけで寄り添おうとすることは、善意であっても、時に大きなリスクを伴います。
これからの指導者に求められるのは、「何かしてあげたい」という想いよりも先に、「自分が今、何をすべきでないのか」を理解していることなのかもしれません。
私たちが目指すこれからの景色
今回のフォーラムは、問題の根深さを改めて浮き彫りにすると同時に、確かな希望も示してくれました。
それは、医療や科学の専門家と指導者が正しく連携すれば、この現状は必ず変えられるという明確な可能性です。
私たちバレエ安全指導者資格®︎とBMSTは、今回の学びを「気づき」や「共感」で終わらせるつもりはありません。
子どもたちが体重や見た目といった数字に心をすり減らすことなく、心身ともに健やかで、真に力強く、しなやかな「踊れる身体」を育めるように。
医療・科学の知見と、日々の指導現場とを結ぶ実践的な仕組みづくりを、今後も着実に推進してまいります。
芸術を愛するすべての人が、心と身体の安全が守られた環境で、安心して情熱を注げる未来へ。
専門家の皆様との連携をさらに深めながら、現場を変える一歩一歩を積み重ねてまいります。
コンクールを主宰される皆様へ
コンクールは、子どもたちにとって自分の可能性を試し、夢に近づくための大切な舞台です。
同時にその環境は、心身に大きな負荷がかかる場でもあります。
医療・栄養・心理など、専門的な知見を持つ第三者が関わることで、コンクールは「削る場」ではなく、育て、守り、未来へとつなぐ場へと進化することができます。そして、今まで以上に保護者の皆様にも安心して、コンクールへのご参加をすすめていくことができます。
すでにBallet Connection様が示してくださっているように、主宰者の意思ひとつで、環境は確実に変えられます。
私たちのメディカルサポートチームは、指導者や主宰者の皆様の判断を否定する存在ではありません。
現場の皆様と同じ目線に立ち、子どもたちの「踊れる身体」とその先の人生を守るための伴走者でありたいと考えています。
子どもたちが、恐れや不安ではなく、誇りと喜びをもって舞台に立てる未来のために。
もしご関心をお持ちいただけましたら、Ballet Connection様同様に、ぜひ一度、私たちのメディカルサポートチームにお声がけください。
その一歩が、コンクールの在り方そのものを変え、ひいては日本のバレエの未来を、より安全で、より誇れるものへと導く力になると、私たちは信じています。
バレエ安全指導者資格®︎ 事務局
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