みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。
『世界で一番安全なバレエスタジオを目指して』というテーマの第4回目。
今回は、本資格にて安全講習の講義を担当してくださっています八木原麻由先生をご紹介いたします。
身体を「知る」ことは、才能を「愛する」こと
見えない世界や感覚を重視するバレエのレッスンにおいて、かつて「解剖学」はどこか遠い世界の学問のように思われていました。
しかし現在、その重要性は広く浸透し、多くの指導者が「身体の仕組み」を学ぼうとしています。
なぜ今、私たちは解剖学を必要としているのでしょうか。
一つは、感覚という「見えないもの」を伝えることの難しさ。そしてもう一つは、日本におけるバレエ教育の基準の曖昧さにあります。
本来であれば、共通の教師資格を取得する過程で知識やスキルを共有し、再現性のある指導を行うことが理想です。
しかし、日本のバレエ界にはまだそうした文化が根付いておらず、多くの先生方がご自身の経験を頼りに指導を行っています。
相対的な基準がない状態での指導は、いわば「広い世界を地図を持たずに旅するようなもの」に等しいと言えます。
だからこそ今、多くの指導者がその「地図」を解剖学に求めているのではないでしょうか。
「解剖学はバレエ以前の基礎であり、それ自体がバレエの技術ではない」という意見もあるでしょう。
たしかにその通りです。
しかし解剖学は、生徒の「今」の安全を守り、かつ「未来」の可能性を最大限に引き出すための、最も論理的で温かい「地図」となります。
専門家の「眼差し」を借りる意義
本資格の解剖学講義で大切にしているのは、単なる筋肉や骨の名前の暗記ではありません。
私たちが目指すのは、医師や理学療法士といった身体のプロフェッショナルが「どのような視点で一人の人間を見つめているのか」という、その姿勢そのものを共有することにあります。
理学療法士として日々、病院のリハビリテーションの現場に立ち、多くの身体と向き合ってきた八木原先生は、まさに「身体との向き合い方」のプロフェッショナルです。
そして、私たちが八木原先生から受け取るべきは、国家資格に裏打ちされた膨大な知識だけにとどまりません。
場所や目的がまったく違っていても、同じ人間の身体を預かるという意味では、理学療法士の方もバレエ指導者の方も変わりはありません。
複雑で繊細な身体を預かり、その人の人生に寄り添うという、専門家としての揺るぎない誠実さを学ぶ場だと言えるのです。
「踊った経験」があるからこそ伝わる言葉
解剖学を学ぶ際、多くの指導者がぶつかる壁があります。
それは「理論はわかるが、実際の踊りにどう結びつければいいのかわからない」というジレンマです。
八木原先生の講義が「わかりやすく、すぐに実践できる」と絶賛される最大の理由は、先生ご自身がコンクール入賞経験を持つほど深くバレエを追求してこられた「踊り手」であることにあります。
- 「アン・ドゥオールをする時、骨盤と股関節の中では何が起きているのか」
- 「関節がどの角度の時に、どのような筋肉が働き、また制限をかけているのか」
八木原先生は、踊り手として感じてきた「感覚」を、理学療法士としての「言語」で鮮やかに翻訳してくださいます。
この「感覚と理論の融合」こそが、指導者にとって何よりの実践的な学びとなるのです。
「根拠」が指導者の自信と生徒の安心を作る
現場で「もっと膝を伸ばして」「もっと足を開いて」と指示を出すとき、そこに解剖学的な根拠はあるでしょうか。
もし、身体の構造上不可能な動きを強いてしまえば、それは「指導」ではなく「加害」になりかねません。
八木原先生の講義で学ぶ「姿勢の評価」や「関節の可動域の理解」は、指導者に「待つ勇気」と「導く自信」を与えてくれます。
「この子の骨格なら、今はここが限界。でも、ここを整えればもっと輝く」
そう確信を持って言える指導者の存在は、生徒にとってこれ以上ない安心材料となります。
解剖学を知ることは、生徒の個性を否定することではありません。
一人ひとり異なる身体の個性を正しく理解し、その子だけの「正解」を一緒に見つけていく作業なのです。
芸術を支える「科学」という土台
バレエは、重力から解放されようとする究極の芸術です。
その浮遊感や美しさを支えているのは、極めて緻密な身体のメカニズムです。
八木原先生が紐解く解剖学の世界に触れると、人間の身体がいかに巧みに作られ、そしていかに大切に扱われるべきものかが痛いほど伝わってきます。
解剖学という土台を固めることは、その上に築かれる芸術をより高く、より強固なものへと押し上げてくれます。
生徒の身体を守り、その才能を一生涯輝かせ続けるために。
解剖学という羅針盤を手に、新しいバレエ指導の扉を共に開いていきましょう。
世界で一番安全なバレエスタジオを、ぜひあなたの手で。
バレエ安全指導者資格®︎ 事務局

八木原麻由 先生
理学療法士
【担当講義】
1)姿勢評価と関節の動きの整理
2)ダンサー・指導者のための解剖学立体解説