みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。

今回は、『「見世物」にしない覚悟 — 教室の宣伝と子どもの肖像権』というテーマでお話をしていきたいと思います。

私たちの願いは、社会とバレエ界をつなぎ、子どもたちが安心できる環境を作ることです。
そのため、あえて先生方には耳の痛いお話をさせていただきます。
時代の変化による「価値観のズレ」や、世間がバレエ界の常識に抱く「違和感」。
そうした事実に気づき、これまでの当たり前を問い直すきっかけになれば幸いです。

教室の宣伝と子どもの肖像権について考える

スマートフォンの普及とともに、レッスンの風景や子どもたちの踊る姿をSNSで発信することは、多くの教室にとって日常的な光景となりました。
「楽しそうな雰囲気」や「高い技術レベル」を伝えるために、動画や写真は最も手軽で強力なツールです。
しかし、その「いいね」の数や再生回数の向こう側で、私たちは無意識のうちに、子どもたちを「見世物」にしてはいないでしょうか。

今、私たちが真剣に向き合うべきは、集客や宣伝という大人の都合のために、子どもの肖像を無断で消費することの是非です。

その投稿は、誰のためのものか

「子どもたちの成長記録です」 「頑張っている姿を見てほしい」

そう語る指導者の言葉に、嘘はないでしょう。純粋な親心にも似た愛情があることも理解できます。
しかし、その投稿の目的の中に、ほんの数パーセントでも「教室の宣伝」や「指導力の誇示」、あるいは指導者自身の「承認欲求」が含まれているとしたら。
それは、子どもたちを一人の人間としてではなく、コンテンツ、すなわち「消費される素材」として扱っていることと同義ではないでしょうか。

特にバレエという芸術は、身体のラインがはっきりと分かるレオタードを着用します。
その姿が無防備にデジタル空間へ放たれるリスクを、私たちはどれほど深刻に捉えているでしょうか。
バレエ以外の世界にとって、その姿がどのような見え方をされてしまうか、どれほどの現実とリスクを想像できていますでしょうか。

教室という守られた空間を一歩出れば、そこは制御不能な世界です。
学校の友人たちに、あるいは、顔も知らない大人たちに、、、。

一度ネット上に流れた画像や動画は、完全に消し去ることは不可能です。
それが将来、子どもたちの意図しない形で拡散されたり、性的な目線で見られたりする可能性は、決してゼロではありません。

「可愛いから」「上手だから」という安易な理由でアップロードボタンを押すその前に、私たち指導者は、その子の10年後、20年後の未来まで責任を持てるのか。 今一度、その指を止めて自問する必要があるのです。

「嫌だ」と言えない子どもたち

さらに深刻なのは、そこに「真の合意」が存在するか?という問題です。

指導者がカメラを向けた時、子どもたちは笑顔を見せるかもしれません。
しかし、それは「撮ってもいいよ」という許可なのでしょうか。
指導者と生徒という、圧倒的な力関係(パワーバランス)の中で、子どもが「先生、撮らないでください」と言うことは、大人が想像する以上に困難です。

「断ったら先生の機嫌を損ねるかもしれない」
「みんなが撮られているのに自分だけ断れない」

そんな無言の同調圧力の中で、彼らはただ笑っているだけかもしれないのです。

「保護者の許可は取っている」という反論もあるでしょう。
しかし、被写体はあくまで子ども本人です。
親が良いと言っても、本人が嫌がっているケースは多々あります。

また、幼い子どもには、自分の姿が世界中に公開されることの意味を理解する術もありません。
だからこそ、私たち大人が防波堤となり、彼らの権利を守らなければならないのです。

拒否する権利の保障と、新しい倫理

「見世物」にしない。そのために必要なのは、明確なルールの策定と、徹底した同意の確認です。

まず、集客や宣伝に画像を使用する場合は、必ず本人と保護者に対し、使用目的、掲載範囲、リスクを丁寧に説明し、書面での同意を得ること。
そして何より重要なのは、「いつでも拒否できる権利」を実質的に保障することです。

「撮影を断っても、レッスンでの扱いには一切影響しない」
「一度許可した後でも、取り消すことができる」

この安心感が担保されて初めて、対等な関係での「合意」が成立します。

また、顔が特定できないアングルや、個人が特定されない形での発信など、子どものプライバシーに配慮したクリエイティブな工夫も求められます。
子どもたちの姿を安易に切り売りしなくても、教室の理念や指導の質を伝える方法はいくらでもあるはずです。

何より、私たちアーティストの最大の強みは、目に見えないものを形にする「想像力」です。
その豊かな想像力を、舞台の上だけでなく、子どもたちの安全や安心、そして彼らの未来を守るために使ってこそ、真に社会の役に立つ存在となれるのではないでしょうか。

信頼という名のブランド

「あそこの教室は、SNS映えはしないけれど、子どもたちのプライバシーを徹底して守ってくれる」

これからの時代、そう評価されることこそが、教室としての最大の信頼であり、ブランドになっていくと思います。
子どもたちは、教室の実績を作るための広告塔ではありません。
彼らの肖像も、プライバシーも、彼ら自身の大切な財産です。
その財産を勝手に切り崩して経営の糧にするような真似は、もしあなたが教育としてバレエ指導をされているとするならば、最も恥ずべき行為です。

「見世物」ではなく、一人の「尊重される個人」として扱う。
その当たり前の倫理観を持つことが、子どもたちの安全を守り、ひいてはバレエ界全体の品格をより美しく高めることにつながると、私たちは信じています。

バレエ安全指導者資格®︎ 事務局

◉バレリーナのセルフチェックガイド
https://safedance.jp/bmst/selfcheckguide/

◉ジュニアバレリーナと指導者のための婦人科ガイド
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◉バレエメディカルサポートチーム
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◉安全指導のプロフェッショナルになるためのバレエ安全指導者養成スクール
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