みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。

今回は、『選択できない子どもたちと、守られるべき尊厳』というテーマでお話をしていきたいと思います。

私たちが常に大切にしている想い。
それは、社会とバレエ界をつなぐ架け橋となること、そして何より、保護者の皆様が安心して大切なお子様を預けられる環境を築き上げていくことです。

これから綴る内容は、日々現場で指導にあたっている先生方にとって、少し耳の痛い、あるいは不快に感じられるものかもしれません。
しかし、あえて書かせていただきます。時代の変化とともに生じている「価値観の違い」や、これまでのバレエ界の当たり前に対する一般社会からの「違和感」。
そうした何かに、少しでも気づいていただくきっかけになればと願っております。

「弟子」なのか、「生徒」なのか

かつて、芸事の世界やスポーツの現場において、「師弟関係」という言葉は絶対的な響きを持っていました。
師の言葉は神の言葉であり、弟子は己を殺してそれに従う。その厳しさの中にこそ美学があり、技術の継承があると信じられてきました。

しかし今、私たちは一度立ち止まり、この「師弟」という甘美な響きを持つ言葉を、違った角度から見つめ直さなければなりません。
問いかけるべきは、一つです。 目の前にいる子どもたちは、本当にその「絶対的な関係」を望んで、そこに立っているのでしょうか。

合意なき「師弟関係」の危うさ

ここで明確に区別しなければならないのは、「大人が覚悟を持って門を叩くこと」と、「子どもが習い事として教室に通うこと」の違いです。

大人が自らの意思で、その道のプロフェッショナルになるために師匠を選び、厳しい修行の道に入る。
そこには「あなたの全てを学びたい」「どんな苦難も受け入れる」という、双方の合意に基づいた契約が存在します。
それは一人の自立した人間としての決断であり、尊重されるべきものです。

しかし、バレエ教室やスポーツクラブに通う子どもたちは、全く別の存在です。

「きれいな衣装を着てみたい」
「友達と一緒に踊りたい」
「体を動かすのが楽しそう」

そんな純粋で多様な動機を持って、あるいは親御さんの勧めで、彼女らはそこにいます。
彼らは、人生の全てを捧げて「弟子」になりに来たわけではありません。
ましてや、指導者の所有物となり、人格を否定されるような厳しい叱責に耐える契約など、どこにも結んでいないのです。

それにもかかわらず、指導者側が一方的に「芸を学ぶとはこういうことだ」「強くなるにはこれが必要だ」という大人の論理を振りかざし、子どもたちに理不尽な服従を強いることは、教育の履き違えと言わざるを得ません。
それは指導ではなく、立場の弱い者への甘えであり、一種の暴力です。

「駒」ではなく「人」として

この「合意なき師弟関係」の延長線上に生まれるのが、子どもを「駒」として扱う歪んだ指導です。

コンクールの順位、進学実績、発表会の完成度。それらは確かに大切な目標かもしれませんが、子どもたちはそのための道具ではありません。
指導者の名声を高めるための「実績作りの駒」でもなければ、指導者の理想を投影するための「作品の一部」でもありません。

子どもを一人の人間(=人)ではなく、機能(=駒)として見てしまうと、指導は冷徹になります。

「入賞しないなら意味がない」
「言うことを聞かない子は要らない」

そうした無言の圧力は、子どもたちから「自分で考える力」や「好きだという気持ち」を奪います。
彼らは指導者の顔色を伺い、失敗を極端に恐れ、自分の人生ではなく、指導者の人生を生きるようになってしまいます。

意思を持った一人の人間への敬意

これからの指導者に求められるのは、子どもたちを「未熟な弟子」として支配することではなく、意思を持った「一人の人間」として尊重することです。

「師弟」という言葉の持つ重たい従属関係から、彼らを解放しましょう。
彼女らは、私たちの期待を満たすために生まれてきたのではありません。
彼女らには彼女らの感情があり、将来選びたい道があり、拒絶する権利もあれば、熱中する権利もあります。

私たち指導者の役割は、彼女らを自分の型にはめることではありません。 彼女らが自分自身の足で人生を歩けるように、安全な環境と正しい技術を提供し、そっと背中を押すことです。

「どうすればいいと思う?」
「あなたはどうしたい?」

そう問いかけること。
そして、その答えが指導者の正解と違っていても、まずは受け止めること。
尊厳を守るとは、大人が一方的に決めた「正しさ」を押し付けることではなく、目の前の小さな人間が発する声に耳を傾け、その存在そのものを肯定することから始まります。

教室は、指導者のための「王国」であってはなりません。
そこは、子どもたちが一人の人間として輝き、それぞれの色で咲き誇るための場所なのですから。

恐怖も不安もない安全な環境にこそ、子どもたちがのびのびとその才能を開花させる土壌が生まれます。
ぜひ私たちと一緒に、新しい日本のバレエ教育の未来を形作っていきましょう。

バレエ安全指導者資格®︎ 事務局

◉バレリーナのセルフチェックガイド
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◉ジュニアバレリーナと指導者のための婦人科ガイド
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◉安全指導のプロフェッショナルになるためのバレエ安全指導者養成スクール
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