みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。
今回は、保護者の方からのご報告の多い練習時間に関して【日本のバレエ教室における深夜練習が奪う、子どもの未来と尊厳】というテーマで、バレエの先生方には少しきつい表現となるかと思いますが、とても大切なお話をしていきたいと思います。
22時過ぎのトウシューズ —「指導」という名の迷走
時計の針が21時を回り、22時を過ぎてもなお、閉ざされたスタジオの中で音楽が鳴り止まない。
(私たちのもとには、24時まで練習をしているお教室があることも報告されています。)
迎えの車の中で待機する保護者たちは、終わりの見えない練習に胸を痛めながらも、「先生の熱意を否定してはいけない」と唇を噛んでいます。
しかし、ここで最も深刻な問題は、保護者の苦悩だけではありません。
当事者である子どもたち自身が、すでに限界を超えて疲弊しているという事実です。
教室に響く「無言の悲鳴」
トウシューズを履いた足は悲鳴を上げ、思考は鈍り、彼女たちの心には純粋な疑問が渦巻いています。
「なぜ、ここまでしなければならないの?」
「明日の学校も早いのに、どうして帰れないの?」
指導者の前では決して口に出せないその問いは、バレエへの愛すらも蝕むほどの重さで、小さな背中にのしかかっています。
そもそも先生方は一体、何に焦り、何に追われているのでしょうか。
その異常な長時間の拘束がきっかけで、子どもたちが学校の授業に集中できなくなり、成績が下がり、生活リズムが夜型へと崩壊していることに気付かないのでしょうか。深夜の帰宅による食習慣の乱れが、ダンサーにとって命とも言える身体作りを阻害している想像は及ばないのでしょうか。
そして何より、かけがえのない「家族との団欒の時間」を奪い続けていることに、どれだけの意味と、罪悪感を感じているのでしょうか。
「あなたの人生」と「子どもの人生」は違う
指導者の方々に、あえて厳しい現実を申し上げます。
あなたにとって、バレエは生活のすべてであり、生きがいであり、生きる術かもしれません。
スタジオが世界の中心であり、そこでの時間が何よりも優先されるべきものかもしれません。
しかし、子どもたちは違います。
彼女たちには、バレエ以外の広い世界があり、学校生活があり、お教室の外にも友人関係があり、家庭があります。
日本のバレエ教室の多くは、あくまで「お稽古事」であり、生活のすべてをバレエと向き合う全寮制の養成学校ではありません。
さらに言えば、世界最高峰のパリ・オペラ座バレエ学校やロイヤル・バレエ・スクールといった「プロ養成機関」でさえ、このような無秩序な長時間練習は行いません。「チャイルド・セーフガーディング(子どもの保護)」の観点から活動時間は厳格に管理され、寮生活では消灯時間が守られています。
プロの学校ですらやらないことを、街の教室が強いている。この矛盾に気付くべきです。
睡眠不足が奪う「身長」という才能
精神論で睡眠時間を削ることは、子どもたちの将来を物理的に閉ざすことにも繋がります。
医学的に見て、成長期の子どもにとって睡眠は「脳の回復」と「身体の成長」のための不可欠な工事時間です。
特に身長は、深い睡眠中に分泌される成長ホルモンによって伸びます。
世界のバレエ団の多くには、依然として163cm〜165cm以上といった身長制限が存在します。
「プロにするため」と深夜まで練習させた結果、睡眠不足で身長が伸び悩み、大人になった時に「身長が足りない」という理由でオーディションを受けられないとしたら。これは指導者の無知が招く、取り返しのつかない悲劇です。
「真のプロフェッショナル」とは
レッスンの量は、必ずしも質を保証しません。
ダラダラと深夜まで居残ることは、熱意の証明ではなく、時間管理能力の欠如です。
一般社会的にいえば、能力の無さを自ら肯定しているようなものなのです。
また、スタジオにいなければ練習できないという思い込みも捨てるべきです。
ストレッチやトレーニング、座学など、稽古場以外で出来ることを増やし、スタジオではそこでしか出来ないことに集中する。
それが効率的な指導です。
真のプロフェッショナルとは、短時間で質の高い仕事を成し遂げられる人のことを指します。
さらにいえば、本当に時間をかけなければならないことを厳選し、そこにコツコツと時間をかけられる人のことを指します。
そして何より、自分と他者を明確に切り分け、他者の権利や尊厳、生活を守りながら、その能力を最大限に引き出せる指導者のことです。
指導者自身の不安や焦りを埋めるために、あるいは何よりも「指導者自身の自己実現の道具」として、子どもたちの時間と健康を浪費してはなりません。
子どもたちが翌朝、スッキリと目覚め、学校へ行き、健やかに背を伸ばす権利を守ること。
それもまた、バレエを愛する者が果たすべき責任ではないでしょうか。
この記事を読んだ感想は、きっと「一般社会」と「バレエ界」で大きなズレが生じることでしょう。
「何を甘いことを」「芸術とはそういうものだ」という反発があるかもしれません。
けれど、その「ズレ」にこそ、私たちが向き合わなければならない現実があります。
このズレを解消できるかどうかが、これからの社会でバレエという芸術が選ばれ続け、生き残っていけるかどうかの「試練」だと、私たちは考えています。
子どもたちの健康と家族との時間を守るために
指導者が自分の不安や焦りを埋めるために、子どもたちの時間と健康を浪費する時代は終わりにしなければなりません。
子どもたちが翌朝、スッキリと目覚め、学校へ行き、健やかに背を伸ばす権利を守ること。
それこそが、バレエを愛する者が果たすべき責任です。
だからこそ、私たちは宣言します。
私たちは、日本のバレエの世界に当たり前の社会常識と安全という優しさ、そしてバレエへの愛情だけでなく、人への愛情を深めるための活動を行なっていきます。
この想いに共感される方は、ぜひ自信を持って、子どもたちの健康と尊厳を守ってあげてください。
もし、より深く子どもたちの心や身体、そして睡眠についても学びたい方は、ぜひ私たちが創設しましたバレエ安全指導者養成スクールにご参加ください。
子どもたちの健康と安全を守ることのできるプロフェッショナルな指導者を、この世界は望んでいます。
バレエ安全指導者資格®︎ 事務局
◉バレリーナのセルフチェックガイド
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