みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。
今回は、『婦人科学 ― 女性の身体を守る「三主徴」の理解から』というテーマで、特に女性が多く活躍されているバレエ業界において、女性の心や身体についての理解が重要であることをお話したいと思います。
ステージに立つダンサーも、教室を運営する指導者も、支えているのは多くの女性たち。
だからこそ、この世界が持続可能であるためには、女性が健康でいられることが、何よりの土台です。
バレエの世界では、「生理が遅れる」「止まっている」と聞くと、まるで“ストイックな証拠”のように語られることがあります。
しかし、それは決して誇るべきことではありません。
それは身体が発しているSOSであり、見過ごしてはならない危険信号です。
女性の身体は、繊細でありながら、驚くほど緻密なバランスで成り立っています。
そのバランスを崩す最大の原因の一つが、スポーツ医学でも重要視されている「女性アスリートの三主徴」です。
これは、①エネルギー不足、②月経異常(無月経・月経不順)、③骨密度の低下
この三つが連鎖して起こる状態を指します。
たとえば、摂取するエネルギーよりも消費が多い状態が続くと、身体は“生き延びるため”にホルモンの分泌を抑制します。
その結果、月経が止まり、骨の代謝も滞ります。
つまり、無月経は「努力の証」ではなく、「生命維持のために機能を止めている状態」なのです。
しかし、現場にはいまだに多くの誤った思い込みが残っています。
「生理が遅れる=太らない」
→ 実際には、ホルモンバランスが乱れることで代謝が低下し、筋肉量が減少し、むしろ太りやすくなります。
「生理が遅れる=背が伸びる」
→ 真実はその逆で、骨密度が低下し、成長板の発達が阻害され、疲労骨折のリスクが増大します。
「無月経は努力の証」
→ それは“努力”ではなく、身体の限界を超えてしまった結果なのです。
これらの思い込みが放置されることで、
一時的に踊れる身体を手に入れたとしても、長期的には
骨粗鬆症、不妊、慢性疲労、抑うつなど、取り返しのつかない健康被害につながることがあります。
無月経は“体重の問題”ではなく、“健康の問題”です。
ホルモンの働きは筋肉や骨だけでなく、心の安定にも深く関わっています。
そのため、月経が止まることで心の不調(イライラ、不眠、抑うつ)が起こることも少なくありません。
この講義では、婦人科医の先生から、
女性の身体の基礎知識、三主徴の予防や早期発見のポイント、女性のライフステージについて、
そして生徒が安心して相談できる関係づくりについて学びます。
また、低用量ピルや鉄分・カルシウム補給など、医学的なサポートを活用した安全なコンディショニング法も取り上げます。
指導者に求められるのは、体型を管理することではなく、健康を守ることです。
「痩せたね」ではなく、「元気そうだね」と声をかけられる文化をつくること。
それが、本当の教育であり、芸術を支える土台です。
バレエは芸術である前に、人間の身体が行う運動です。
心と身体が健やかでなければ、どんな美しさも持続しません。
婦人科学を学ぶということは、女性の身体に宿るリズムを尊重すること。
生徒たちの未来を守り、長く踊り続けられる環境をつくることが、現代の指導者に求められる“新しい美の倫理”です。
バレエ安全指導者資格®︎ 事務局
ジュニアバレリーナと指導者のための婦人科ガイドもぜひご覧ください。
https://safedance.jp/gynecology/