みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。
今回のコラムでは、「幼少期の体験は、その後の人生に大きな影響を与える」というテーマでお話したいと思います。
幼少期に育まれる「心の土台」
私たち大人にとっても、子どもの頃の体験は単なる思い出以上の意味を持っています。
それは「自分とは何か」「社会とどう関わるか」「どんな人生を歩みたいか」という深い部分にまで根を下ろし、無意識の価値観や行動パターンを形づくっていきます。
中でも特に重要なのが、自己肯定感と自己効力感です。
自己肯定感とは「自分には価値がある」と思える感覚、
自己効力感とは「自分は何かを達成できる」と信じられる感覚です。
バレエのレッスンを通して子どもたちは身体だけでなく心も育っていきます。
だからこそ、私たち指導者は「技術」以上に「今、その子の中で何が育っているのか」に目を向けなければなりません。
傷つきやすい心と、大人の言葉の影響
人間は社会的な存在です。
まだ自分を客観的にとらえる力が育っていない子どもたちにとって、大人の言葉や態度は「自分の価値」を決める大きな手がかりになります。
・比べられる
・できないことを責められる
・「もっと頑張ればできるのに」と否定される
こうした経験を、早ければ3歳から感じながら子どもたちは育っていきます。
「できない=ダメな人間」という感覚を、まだ自分という存在をうまく理解できていない時期に刷り込まれてしまうことは、とても悲しいことではないでしょうか。
しかも、バレエという「理想の美しさ」を追い求める世界では、その傾向がより強まりやすいのです。
子どもたちは周囲の評価基準に無理にでも自分を合わせようとし、人と比べ、できなさに焦り、自己肯定感や自己効力感を失ってしまうことがあります。
まずは「ここにいていい」と伝えること
大人ですら「自分にはどんな価値があるのか」と悩み、人に認められたい、愛されたいという欲求と折り合いをつけるのに苦労します。
それをまだ未成熟な子どもたちが上手に言葉や行動で表すことは、とても難しいことです。
だからこそまずは、「あなたはこの世界にいていい存在だよ」と伝えることが大切です。
何もできなくてもいい。ただ、そこにいてくれることが素晴らしい。
一緒に何かできたなら、それはもうとても特別なこと。
バレエという過酷さを伴う世界だからこそ、人生の最初に得られる「無条件に受け入れられた」という感覚は、後の人生においても揺るがない強さを支える土台になります。
技術よりも、心を守る力を
そもそも、すべての子どもがプロを目指すわけではありません。
そしてたとえプロを志すとしても、その厳しい世界を生き抜くためには、技術だけでなく「自分を信じられる心」が欠かせません。
メンタルがどれほど揺れやすいか、自己評価がどれほどパフォーマンスに影響するかを、私たち大人はよく知っているはずです。
だからこそ、バレエ指導の場は「勝ち負け」や「上手いか下手か」だけで測られる場所ではなく、その子の内面を支える場所であるべきだと考えています。
忘れてはいけない二つの視点
子どもたちと向き合う時、忘れずにいたいのはこの二つです。
1)子どもは大人ではない
2)生徒はあなたと同じではない
つい「私の時はこうだった」「私はこうやって乗り越えた」と、自分の経験を押し付けてしまうことがあります。
でもその言葉が、子どもにとって励ましではなく「あなたはできないからダメ」というメッセージとして届いてしまうこともあるのです。
子どもたちは、自分の子ども時代のコピーではありません。
一人ひとりが異なる背景や性格、発達段階を持つ存在だという視点を忘れずにいたいものです。
バレエが「第三の居場所」になれるなら
人はみな同じではありません。
それは能力的なことだけでなく、家庭環境や周囲の人間関係に至るまで、本当にさまざまです。
たとえ同じ家庭に生まれても、兄弟姉妹であっても、置かれる状況や与えられる環境は異なり、さらに気質や性格も加われば、同じということは決してありません。
もし、ある子どもが日常のあらゆる環境で自己肯定感を育みにくい場所にいたとしたら——
バレエという世界が、その子にとっての「サードプレイス(第三の居場所)」として機能することができるのではないでしょうか。
もちろん、ご家庭の事情はとてもセンシティブで、バレエ教師が踏み込むことはできません。
けれど、少なくともレッスンの場だけでも「その存在を丸ごと認めてもらえる場所」として機能することはできる。
そうした場があるだけで、子どもたちは少しずつ「自分はここにいていい」と感じられるようになっていきます。
比べない安心感を、バレエの現場に
今の子どもたちはSNSや動画を通じて、無数の「理想の身体」「理想のバレエ像」にさらされています。
だからこそ指導の現場では、「あなたはあなたのペースで大丈夫」という安心感を伝えることが、何より大切です。
「どんな自分でも価値がある」
「努力を続ける自分を信じていい」
そんな感覚を、バレエのレッスンの中で一つでも多く持ち帰ってもらえるような指導を目指していきたいですよね。
バレエは人生のすべてではない
バレエは素晴らしい芸術です。
けれど「バレエが人生のすべて」である必要はありません。
バレエを通して、子どもたちが「自分らしく生きる力」を育めるように。
私たち大人がまず、学び続け、考え続けること。
その姿勢こそが、子どもたちにとって一番の「指導」になるのだと、私たちは考えています。
バレエ安全指導者資格®︎ 事務局
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