世界で一番安全な バレエスタジオに向けて。 講師紹介|産婦人科医 塚田訓子先生
「生理が止まるほど頑張っている」は、努力の証ではありません。月経は、成長期の健康やエネルギー状態、骨の健康を考えるうえで大切な情報の一つです。バレエ安全指導者資格®︎で婦人科学を担当してくださっている塚田訓子先生から、女性の身体を“我慢させる”のではなく、適切な医療へつなぎながら守るための視点を学びます。
BALLET SAFE TEACHER INSTRUCTOR
塚田 訓子 先生 KUNIKO TSUKADA, MD
- 産婦人科医
- アトラスレディースクリニック 院長
- 東京産婦人科医会 理事
高円寺のアトラスレディースクリニックで、思春期から更年期まで女性の一生を支える婦人科診療に携わる塚田先生。東京産婦人科医会では女性ヘルスケア・学校保健を担当し、学校現場での性の健康教育にも取り組んでいます。バレエの現場では、月経、低エネルギー利用可能性、骨の健康、月経困難症やPMSなど、指導者が見過ごしてはいけない女性の健康課題を分かりやすく伝えてくださいます。
WHY GYNECOLOGY IN BALLET EDUCATION?
なぜ、バレエ指導者が
「婦人科学」を学ぶのでしょうか
みなさま、こんにちは。セーフダンスアソシエーションです。
『世界で一番安全なバレエスタジオを目指して』。講師紹介シリーズ第6回は、婦人科学の講義を担当してくださっている塚田訓子先生をご紹介します。
バレエを本格的に学ぶ時期は、思春期の身体が大きく変化する時期と重なります。
月経が始まる。体つきが変わる。学校生活とレッスン量が増える。体型への意識も強くなる。その中で、食事を減らし、練習量を増やし、不調があっても「みんな同じだから」と我慢してしまうことがあります。
しかし、月経の変化は「女性だから仕方がない」と片づける問題ではありません。
月経は、健康状態を考えるための
大切な情報の一つです。
指導者が診断する必要はありません。大切なのは、「これは一度相談した方がいいかもしれない」と気づき、本人や保護者へ声をかけ、必要に応じて婦人科へつなぐことです。
AMENORRHEA IS NOT A BADGE OF EFFORT
「生理がない」を、
一生懸命練習した証にしない
過度な運動、十分でないエネルギー摂取、ストレスなどは、月経に影響することがあります。
ただし、無月経にはさまざまな原因があり、「バレエをしているから」「痩せているから」と一つの理由に決めつけることもできません。
だからこそ、月経が長く来ていない状態を放置せず、適切に評価することが重要です。
一般的な医学的目安では、二次性徴が通常に進んでいるにもかかわらず15歳までに初経がない場合、また、それまで比較的規則的だった月経が3か月を超えて来ない場合などは、医療機関での評価が必要とされています。もともと月経が不規則な場合は判断基準が異なるため、自己判断せず相談します。
「生理がなくて楽」ではなく、
「なぜ来ていないのだろう」と考えられる環境へ。
ENERGY, MENSTRUAL FUNCTION & BONE HEALTH
成長期は、
骨を育てる大切な時間でもあります
従来、女性アスリートの健康問題は「女性アスリートの三主徴(Female Athlete Triad)」として、低エネルギー利用可能性、月経機能の異常、骨密度低下の関連から整理されてきました。
現在のスポーツ医学では、これをさらに広げ、女性・男性の双方で、長期的・重度の低エネルギー利用可能性が複数の生理機能や心理面、パフォーマンスに影響し得る「REDs(Relative Energy Deficiency in Sport)」という概念でも捉えられています。
特に思春期から若年期は、骨量を獲得していく重要な時期です。
「18歳になったら一生の骨が決まる」という単純な話ではありませんが、この時期の栄養、運動、ホルモン環境が将来の骨の健康に重要であることは確かです。
体重の数字ではなく、
エネルギー・月経・骨・疲労・怪我をつなげて見る。
「BMIが○以下なら必ず無月経になる」という一本の境界線で判断することはできません。REDsや月経異常は、見た目や体重だけでは評価できず、食事、活動量、月経歴、怪我、心理面などを含めた専門的な評価が必要です。
CURRENT PROFILE
塚田訓子先生
プロフィール
2026年8月時点で確認できるクリニック・東京産婦人科医会等の公開情報をもとに整理しています。
- 現在の主な役職
- 産婦人科医/医療法人社団シリウス アトラスレディースクリニック 院長/東京産婦人科医会 理事
- 東京産婦人科医会
- 2025・2026年度理事。女性ヘルスケア・学校保健を担当。
- 主な所属学会
- 日本産科婦人科学会、日本思春期学会、日本性感染症学会、日本婦人科腫瘍学会、日本母性衛生学会、日本エンドメトリオーシス学会、日本女性医学学会
- 学歴・経歴
- 旭川医科大学医学部卒業。北海道大学病院で研修後、札幌医科大学医学部産婦人科学講座に入局。斗南病院、札幌医科大学附属病院、婦人科クリニック等での勤務を経て、2010年よりアトラスレディースクリニック院長。
- 女性の健康教育
- 思春期の月経、月経困難症、性の健康教育などについて、学校・医療・地域をつなぐ啓発活動や講演を継続。
- 子宮内膜症啓発
- 日本子宮内膜症啓発会議(JECIE)の活動にも参画し、子宮内膜症や月経痛についての啓発に関わる。
FROM THE STUDIO TO MEDICAL CARE
指導者にできるのは、
「診断」ではなく「気づき」と「橋渡し」
月経が来ていない。月経痛でレッスンに参加できない。月経前に強い不調がある。食事量が大きく減っている。疲労や骨ストレス障害を繰り返している。
こうした変化に気づいたとき、指導者が原因を決めつけたり、治療法を指示したりする必要はありません。
本人のプライバシーに配慮して話を聞く/必要に応じて保護者と共有する/「月経がないのは普通」と片づけない/婦人科など適切な医療機関への相談を勧める/治療内容や服薬について指導者が独断で評価しない。
低用量ピル・LEPなどのホルモン治療は、月経困難症やPMSなどで選択肢となることがあります。一方で、体質や症状、目的によって適否が異なり、医療機関での評価と処方が必要です。
「分からないから触れない」ではなく、
「分からないから、専門家につなぐ」。
この姿勢こそ、バレエ指導者が婦人科学を学ぶ大きな意味です。
LECTURES IN THE BALLET SAFE TEACHER PROGRAM
塚田先生から学ぶ、
婦人科学の講義
思春期から成人まで、月経と健康を「我慢」ではなく医学の視点で考えます。
月経との付き合い方と女性アスリートの三主徴
月経の基礎、月経不順・無月経、女性アスリートの三主徴、低エネルギー利用可能性、REDs、骨の健康、月経困難症やPMS、ホルモン治療の基本的な考え方などを学び、指導現場から医療へつなぐ判断軸を身につけます。
MEN ALSO NEED WOMEN’S HEALTH LITERACY
男性指導者にも、
女性の健康を学んでほしい理由
女性特有の身体変化を自分自身では経験しない男性指導者にとって、月経について話すことは難しく感じられるかもしれません。
けれど、だからこそ正しい知識が必要です。
月経痛を「我慢すればいい」と言わない。無月経を「プロなら普通」と扱わない。必要なときに女性医師や婦人科へつなぐ。相談された内容を不用意に他者へ広めない。
経験できないからこそ、
知識と敬意で支えることができます。
性別を問わず、指導者全員が女性の身体について最低限の共通知識を持つこと。それは、生徒との信頼関係を守るための基本的なリテラシーだと考えています。
ART AND HEALTH ARE NOT OPPOSITES
芸術と健康を、
対立させないバレエへ
目の前のコンクールや舞台は、大切です。
けれど、その数週間・数か月の結果のために、成長期の身体や将来の健康を犠牲にしてよい理由にはなりません。
10年後、20年後も健康に暮らせること。踊り続けるにしても、別の人生へ進むにしても、自分の身体を大切にできること。
月経を守ること、骨を守ること、
食べることを守ることは、
その子の人生を守ることです。
塚田先生から届けていただく婦人科学の知識を、バレエの現場へ。女性の健康を「言いづらい話」にせず、安全な指導の標準的な知識として広げていきたいと考えています。
LEARN WOMEN’S HEALTH FOR SAFE BALLET TEACHING
月経と女性の健康を、
安全な指導の共通知識へ
本人の身体を尊重し、必要な医療につなぐ判断力を持つ指導者へ。
BALLET SAFE TEACHER SCHOOL
バレエ安全指導者養成スクール
婦人科だけでなく、整形外科、心理、栄養、理学療法など各領域の専門家とともに、子どもの身体・心・生活を守るための判断力を横断的に学びます。
- 月経と成長期の健康
- 女性アスリートの三主徴・REDs
- 骨の健康とエネルギー
- 月経困難症・PMS
- 婦人科へつなぐ判断
PROFILE & MEDICAL SOURCES
プロフィール・医学情報の確認資料
本記事は、2026年8月時点で確認できるアトラスレディースクリニック、東京産婦人科医会、日本子宮内膜症啓発会議、スポーツ医学・婦人科領域の公開情報をもとに整理しています。月経不順・無月経の原因は一つではなく、体重や運動量だけで診断することはできません。月経、骨、低エネルギー利用可能性、ホルモン治療などの個別評価・診断・治療は産婦人科医等の専門職の領域です。