みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。

今回は、『子どもを守るリテラシー ― 想像力の本来の使い方とは』というテーマで、私たちにとって大切なお話をしたいと思います。

SNSやYouTubeでの配信が日常の一部となった今、先生たちは「教える力」だけでなく、「発信する力」も問われる時代に生きています。
けれども、この「発信」が新しいリスクを生み出していることに、どれだけの人が気づいているでしょうか。

かつて、バレエ教師や芸術家が世間に自分の存在を伝える手段は、口コミや舞台、ポスターなど限られたものでした。
しかし今では、スマートフォン一つで誰でも発信者になれます。
スタジオのレッスン風景や、生徒たちの舞台の様子を写真や動画で紹介することは、宣伝としてとても効果的です。
けれども、そこに映る「子どもたちの姿」には、常に守られるべき権利があることを、私たちは忘れてはいけません。

教師がSNSやYouTubeを使って発信すること自体が悪いわけではありません。
問題は、その目的と意識です。
生徒の写真を「自分の成果」として投稿することと、
生徒の成長や努力を「彼女・彼ら自身の物語」として伝えることは、似て非なる行為です。

前者は教師の自己承認やビジネス的な成功のために生徒を“利用”してしまう危険があります。
後者は、生徒に主体を置き、その未来を尊重する姿勢です。
このわずかな意識の差が、教育の質を、そして信頼関係を大きく左右します。

あなたが得たい「いいね」や「視聴回数」は、あなた自身にはメリットがあるかもしれません。
けれども、それが本当に生徒たちに還元されているでしょうか?

まだ未熟な子どもたちは、自分の姿が世界に晒されることの意味を、十分に理解しているとは限りません。
本当は見せたくない姿が、お教室の発信を通して、その子の友人や家族、さらには知らない人々の目に触れてしまうこともあります。
だからこそ、私たち大人が「発信すること」と「守ること」の両方の責任を持たなければなりません。

情報発信の自由と、子どもたちの尊厳や安全。
そのバランスをどう保つかが、これからの教育者に求められる最低限のリテラシーです。

リテラシーとは、単に「危険を避ける知識」ではなく、
「相手の尊厳を守るための思考力」です。
それは、“見せる”ための技術ではなく、“守る”ための倫理。
そしてそれは、教える立場にある人ほど強く持つべき責任です。

そもそも、芸術を扱う私たちは「想像力」という特別な力を養ってきたはずです。
そしてその想像力は、作品を生み出すだけでなく、他者を思いやるためにも使えるはずのものです。
しかし現状では、その想像力が「どんな言葉が注目を集めるか」「どんな写真が“映えるか”」といった方向に向かいがちです。
配慮よりも表現、共感よりも承認が優先される時代の流れの中で、
私たちはいつのまにか、教育者としての最も大切な感性【他者を守る想像力】を後回しにしてしまっているのかもしれません。

生徒の写真やエピソードをSNSやYouTubeで紹介すること自体が悪いわけではありません。
問題は、その意図と視点です。
「自分の指導力を見せたい」のか、「生徒の努力を社会に伝えたい」のか。
その目的の違いが、教育の質と信頼を決定づけます。

もし、投稿の中に「生徒の顔」「名前」「学校」などの情報が含まれているなら、
それは本人や家庭の許可があるか、将来の影響を想像しているかを確認するべきです。
教師の一度の投稿が、子どもの一生のデジタル記録として残る、それが今の時代の現実です。
この「想像力の欠如」が、無意識の加害を生んでしまうこともあります。

率直に問います。

そもそも、お教室の宣伝や収益を目的とする以外で、世界に発信する意味はあるのでしょうか?
もしそれがお教室の宣伝や収益につながらない世界になったとしても、あなたは今の発信を続けていますか?

教師の役割は、生徒をステージに立たせることだけではありません。
そのステージに立つ前の過程、そしてその後の人生までを支えること。
SNSやYouTubeの発信ひとつにも、教育者としての哲学が問われる時代になっています。

バレエという芸術は、「美しさ」を通して人間の可能性を信じる行為です。
だからこそ、その根底には「他者への敬意」と「思いやり」がなければなりません。
私たちは、自分の名声や承認欲求よりも、目の前の子どもたちの未来を守ることを選ばなければならない。

それが、これからの時代の「先生のリテラシー」です。
光のように輝く舞台の裏で、静かに子どもたちを守る。
そんな教師こそが、ほんとうに尊い存在だと、私たちは考えています。

バレエ安全指導者資格®︎ 事務局

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