Ballet Medical Support Team
バレエダンサーに必要なのは
「細い身体」ではなく「踊れる身体」
デンマーク王立バレエ団で活躍する川添智香さんの経験から、 バレエにおける身体の価値観と、摂食障害を予防する環境づくりを考えます。
この記事の結論
プロのバレエダンサーに必要なのは、ただ細い身体ではありません。 稽古と舞台に耐え、十分に回復し、表現を続けられる「踊れる身体」です。 子どもが「痩せること=上手くなること」と思い込まないためには、 指導者・保護者・プロダンサーが共通の価値観を持ち、言葉と行動で示す必要があります。
みなさま、こんにちは。
セーフダンスアソシエーションです。
この夏、セーフダンスアソシエーションでは、メディカルチーム主催の特別企画として 「摂食障害の理解を深める会」を開催しています。
Special Program
海外で活躍するダンサーの経験から、身体の価値観を考える
初回は、デンマーク王立バレエ団でご活躍中の川添智香さんをゲストに迎え、 ご自身の歩みと、海外のバレエ団で実際に感じてきた身体への考え方について、 貴重な経験をお話しいただきました。
川添さんは、ローザンヌ国際バレエコンクールを経て、 日本からアメリカ、ドイツ、そして現在のデンマークへと活躍の場を広げてこられました。 その歩みの中で感じた、国やカンパニーごとに異なる 「求められるダンサー像」や「身体に対する価値観」は、 日本のバレエ教育を見つめ直す大きなヒントとなるものでした。
A Healthy Environment
デンマーク王立バレエ団で感じた「ヘルシーな価値観と環境」
国やカンパニーが変われば、ダンサーに求められる身体像や、 健康を守るための考え方も変わります。
特に印象的だったのは、川添さんが紹介してくださった、 デンマーク王立バレエ団におけるヘルシーな価値観と環境です。
日本のバレエの世界では今なお、「痩せていること」が求められるような空気が、 とりわけジュニア世代を取り巻いています。 少しでも体型が変われば「太った」と言われる。 SNSでは細く加工された身体が「理想」として共有される。 そのような日常の中で、子どもたちが無意識のうちに 「痩せること=上手くなること」と信じてしまっても無理はありません。
指導現場の言葉
体型への何気ない評価が、技術や自己価値への評価として受け取られることがあります。
SNS上の身体像
加工された画像や一面的な理想像が、現実の身体に対する不満を強めることがあります。
身近なロールモデル
指導者やプロダンサーが示す姿勢は、若い世代の価値観に大きく影響します。
A Body That Can Dance
プロになるために必要なのは、“細い身体”ではなく、“踊れる身体”
踊るために食べる。
回復するために休む。
表現を続けるために、身体を守る。
プロの舞台では、日々のクラスやリハーサルを重ねながら、 集中力を保ち、本番で表現し、次の舞台に向けて回復する力が求められます。 見た目の細さだけでは、その仕事を続けることはできません。
必要なのは、ただ細い身体ではなく、踊り続けられる身体。
川添智香さんのお話から受け取ったメッセージ今回、川添さんはこの考えを、ご自身の海外での経験から語ってくださいました。 実際にプロの世界で活躍するダンサーから届けられた言葉だからこそ、 私たちはそこに強い勇気と安心を感じました。
そのメッセージは、指導者にとって、日々の声かけや評価基準を見直すきっかけになります。 また、これからプロを目指す若い世代にとっては、 自分の身体を傷つけることが努力なのではないと知るための、大きな支えになるはずです。
What Adults Can Do
子どもが健全な価値観を信じられる環境を、大人がつくる
子ども本人に「気をつけよう」と伝えるだけでは、環境は変わりません。 周囲の大人が共通の姿勢を持ち、日常の言葉と行動を変えることが必要です。
体型ではなく、状態と行動を見る
- 体型と才能・努力・配役を安易に結びつけない
- 疲労、集中力、回復、痛みなどを継続的に観察する
- 食事や体重の問題を一人で判断せず、専門家へつなぐ
安心して話せる生活環境をつくる
- 体重の数字だけでなく、食事・睡眠・気分の変化を見る
- 食べることへの罪悪感を強める言葉を避ける
- 変化を感じたら、責めずに話を聞き、早めに相談する
若い世代に届く身体観を意識する
- 細さだけを成功や美しさの条件として発信しない
- 食事、休養、回復もプロの仕事であると伝える
- 加工画像や体型に関する言葉が与える影響を考える
気になる変化があるときは、早めに専門家へ
摂食障害は、本人の意思の弱さや単なる好き嫌いの問題ではありません。 食事量の大きな変化、体重への強い恐怖、過度な運動、月経や体調の変化、 気分の落ち込みなどが見られる場合は、指導現場だけで解決しようとせず、 医療機関や適切な専門職への相談を検討してください。 本記事は一般的な教育情報であり、個別の診断や治療に代わるものではありません。
Our Message
「大丈夫だよ」と伝えられる先生と環境を増やしたい
私たちセーフダンスアソシエーションは、 バレエの現場に「安全」と「安心」を届けることを使命として活動しています。 摂食障害の予防と理解もまた、安心して踊り続けられる環境づくりの重要な柱のひとつです。
食べることは、生きること。
そして、生きることは、踊ることにつながっています。
今、この瞬間にも、体型のことで悩んでいる子どもがいます。 バレエを愛しているのに、自分の身体を好きになれず、苦しんでいる生徒がいます。 その子たちに「大丈夫だよ」と伝えられる先生や環境を増やしていきたいと、私たちは考えています。
私たちはこれからも、「教育」という視点からバレエを見つめ、 学びと対話を重ねながら、誰もが安心してバレエに向き合える場所づくりに取り組んでいきます。
川添智香さん、心に響くメッセージをありがとうございました。
Watch the Message
川添智香さんのお話を一部ご紹介します
海外のプロフェッショナルな現場で感じた身体への価値観を、 川添さんご自身の言葉でお聞きください。
Safer Ballet Education
身体と心を守れる指導を、学びから現場へ
セーフダンスアソシエーションでは、身体・心理・栄養・成長期への配慮を横断し、 生徒の変化に気づき、必要な専門家へつなげられる指導環境づくりを進めています。