痩せていること=美しいこと? バレエと摂食障害を考える。 『踊れるからだをつくろう!〜バレエと食・身体を考えるフォーラム〜』初日を終えて
バレエにおいて「細いこと」と「踊れる身体」は同じではありません。過度な食事制限や体型への評価は、成長期の子どもやダンサーの心身、怪我のリスク、集中力、そして長く踊り続ける力にも関わります。セーフダンスアソシエーションが、専門医の講義とデンマーク王立バレエ団で活躍する川添智香さんとの対談を通して、摂食障害、食事、身体、表現、指導者・保護者の役割を考えます。
バレエと摂食障害について、まず知ってほしいこと
「痩せていること=踊れること」ではありません。「体型を維持するために食事を我慢する」のではなく、「踊るために、そして表現をするために食事を楽しむ」。身体を細くすること自体を目的にせず、必要なエネルギーをとり、心身の健康と芸術性を両立させながら、長く踊り続けられる身体を育てることが大切です。そのために、まず指導者・保護者・ダンサーを支える大人が、体型評価と言葉のあり方を見直す必要があります。
DAY 1 — EATING DISORDERS
バレエと摂食障害を考える。
「踊れるからだ」のために知ることから
みなさま、こんにちは。セーフダンスアソシエーションです。
今回は、本日初日を終えました『踊れるからだをつくろう!〜バレエと食・身体を考えるフォーラム〜』についてお話していきたいと思います。
今回のテーマは「摂食障害」。セーフダンスアソシエーション(SDA)メディカルチームに所属する専門医による講義、そして現在デンマーク王立バレエ団でご活躍中の川添智香さんとの対談が行われました。
摂食障害を医学的な視点から学び、身体だけでなく心への影響についても考える講義。
デンマーク王立バレエ団で活動する立場から、海外の環境や食事、身体、ダンサーとしての実感を共有。
「痩せていること=美しいこと。」
その価値観を、私たちは一度立ち止まって考える必要があります。
THIN DOES NOT MEAN DANCEABLE
バレエでは、なぜ
「痩せている=美しい」を問い直す必要があるのか
日本では、「痩せていること=美しいこと」という価値観が広く浸透しています。そして、それはバレエの世界においても例外ではありません。
思春期の子どもたちが多く通うバレエ教室でも、細くあることが一つの「理想」として扱われることが、今もなお少なくありません。
けれど、細いことは、必ずしも「踊れるからだ」ではありません。
無理な制限や過剰な痩身は、エネルギー不足による集中力の低下や怪我のリスクを高め、パフォーマンスを損なう原因にもなりえます。さらに、一度摂食障害を発症すると、長期にわたる身体的・精神的な影響を受けることもあります。
目指したいのは「数字として軽い身体」ではなく、レッスンや舞台に必要なエネルギーを持ち、集中し、回復し、長く踊り続けることのできる身体です。
細さを評価する前に、
その身体が「踊るために健やかか」を考える。
WHAT CHANGES WHEN THE VALUE SYSTEM CHANGES?
日本と海外のバレエ環境。
体型評価の違いから見えてきたもの
川添さんとの対談では、海外のバレエ環境との違いについても語られました。
たとえば、所属されているデンマークのバレエ団では、ダンサー一人ひとりの健康が重視され、「細い」ことで心身の健康を心配されることはあっても、それ自体が肯定的な評価につながるわけではない、というお話がありました。
一方、日本では今もなお、数値的な体重や見た目での評価が先行する傾向があります。SNSやYouTubeでの発信においても、その価値観が強く表れる場面があります。
その背景には、人間の身体、とりわけ成長期の子どもや女性の身体について、十分な知識が共有されてこなかったことも深く関わっているのではないでしょうか。
バレエは芸術であると同時に、
身体を通じた表現です。
だからこそ、心と身体が健やかであってこそ、その人らしい美しさや表現の豊かさがにじみ出るものだと考えます。
EAT TO DANCE, EAT TO EXPRESS
ダンサーにとって食事とは。
「食べること」が踊りと表現を支える
「体型を維持するために食事を我慢する」のではなく、
「踊るために、そして表現をするために食事を楽しむ」。
食べるという体験を通じて、ダンサーとしてより豊かな表現にもつながるという川添さんのお話は、健康と芸術性の両立に欠かせない、とても大切な視点だと感じました。
食事を「体型を変えるための敵」として見るのではなく、踊るためのエネルギーであり、回復するための時間であり、人生の中にある豊かな体験の一つとして捉える。
その考え方は、単に栄養の問題にとどまりません。ダンサーが自分の身体をどのように受け止め、どのような気持ちで舞台に立つのかという、表現そのものにもつながっていきます。
「食べないことで踊る」のではなく、
「食べることで踊り続ける」へ。
THE RESPONSIBILITY OF ADULTS
成長期の子どもと摂食障害。
大人が「普通」を問い直す
摂食障害には、本人が自覚しづらく、周囲も気づきにくいという難しさがあります。見た目だけではわからないことも多く、指導者や保護者の何気ない一言が、本人の心に深く残ることもあります。
そして、私たちバレエの業界で活動する大人、夢を与える側のプロフェッショナルなダンサーや指導者は、小学生のうちから食事を我慢しなければならないという状況が「普通」ではないことを、自覚しなければならないと思います。
必要な食事にすら罪悪感を覚え、「食べない」という選択へ追い込まれていくような状況があるなら、もっと真剣に目を向ける必要があります。
「昔からそうだった」「プロを目指すなら仕方がない」で終わらせず、その価値観が子どもの身体と心に何を残すのかを考えること。それが、今のバレエに関わる大人に求められている視点です。
WORDS SHAPE THE BODY IMAGE
バレエ教師の言葉と体型評価。
子どもの身体イメージをどう守るか
だからこそ、まずは大人が正しい知識を持つこと。
子どもたちの身体に触れ、日々接する私たちが、「バレエの美しさとは何か」「何を美しいと感じるのか」、そして指導者として「どんな言葉をかけるのか」に、もっと敏感でありたいのです。
体重や見た目に関する言葉は、指導する側にとっては一瞬でも、受け取る子どもにとっては長く残ることがあります。
子どもの身体を変える言葉ではなく、
子どもが自分の身体を大切にできる言葉を。
技術を高めることと、健康を守ることは、対立するものではありません。むしろ、長く踊り、表現を深めていくためには、その両方が必要です。
WHAT TEACHERS & FAMILIES CAN DO
バレエ教師・保護者ができること。
「痩せる指導」から「踊れる身体を支える環境」へ
摂食障害を予防したり、本人の苦しさに気づいたりするために、バレエ教師や保護者が診断をする必要はありません。大切なのは、日々の教室や家庭で、体重や見た目だけを評価の中心にしないことです。
・「細い」「太った」など、体型そのものを評価する言葉を安易に使わない
・成長期の子どもが食事を我慢することを「努力」や「プロ意識」として扱わない
・食事、身体、月経、疲労、気持ちの変化について、本人が話せる雰囲気をつくる
・指導者だけで抱え込まず、必要に応じて医療・栄養・心理などの専門家につなぐ
・「軽い身体」ではなく、踊るためのエネルギー、回復、集中、継続を大切にする
セーフダンスアソシエーションが大切にしているのは、指導者が何でも解決することではなく、身体と心の変化に気づき、適切な専門家につなげるための判断力を持つことです。
守るべきなのは、体重の数字ではなく、
その人がこれからも踊り、生きていく身体です。
NEXT FORUM — AUGUST 13
もっと知りたい方へ。
次は「栄養と食事」から踊れる身体を学ぶ
次回8月13日のフォーラムでは、スポーツ栄養士としてダンサーの食と身体に関する学びを支える伊藤あゆみ先生による「踊る身体をつくるための栄養と食事」をテーマとした講義を予定しています。
さらに、摂食障害を体験され、現在も新体操の指導者として、そしてご自身もダンサー・振付家として活動されている杉本音音先生によるトーク&対談も予定されています。
「踊る身体をつくるための栄養と食事」をテーマに、踊る人に必要な食と身体を考えます。
摂食障害の体験と、現在の新体操指導・ダンス・振付の活動から、身体との向き合い方を語ります。
このフォーラムは、単なる「知識の提供」ではありません。
健やかに踊るための「出発点」です。
FORUM INFORMATION
大切な人を守るために。
そして、自分自身を大切にするために。
セーフダンスアソシエーションが、バレエと食、身体、心について、専門家と当事者・実践者の声から一緒に考える学びの場です。体型への不安や、成長期の食事・指導のあり方をより深く学びたい方は、フォーラムの詳細をご覧ください。
DANCEABLE BODY FORUM
『踊れるからだをつくろう!』
〜バレエと食・身体を考えるフォーラム〜
- 摂食障害を医学と実体験の両面から考える
- 踊る身体を支える栄養と食事を学ぶ
- 体型ではなく、健康と表現を軸に考える
LEARN MORE
バレエの安全と健康を、もっと深く学ぶ
本記事は、セーフダンスアソシエーションが開催する『踊れるからだをつくろう!〜バレエと食・身体を考えるフォーラム〜』初日の内容を振り返り、バレエにおける摂食障害、体型評価、食事、身体、表現、指導者・保護者の役割について考えるコラムです。摂食障害について個別の診断や治療を行うものではありません。心身の状態に不安がある場合は、医療機関など適切な専門家へご相談ください。