みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。
今回のコラムでは、「バレエ団での時間を超える、次の人生へ」というテーマで想いを書いていきたいと思います。
これはバレエ団で過ごした方にしかわからない側面も多く、ご家庭の事情や現在置かれている環境、性格なども重なり合いますので、一括りにはできませんが、一つのケースとして考えていただければ幸いです。
バレエ団での生活のリアル
バレエ団に入団するというのは、ほんの一握りの人にしか開かれない狭き門です。そして、どれほど高い技術を持ち努力を重ねても、団のレパートリーや団員構成、採用のタイミングといった「運」に左右される部分が大きくあります。だからこそ、入団できたという事実そのものが特別であり、誇るべき成果だと思います。
しかし、その夢を叶えたダンサーであっても、日々の生活は決して平坦ではありません。
舞台に出たい、より大きな役を踊りたいという願いはきっと誰もが抱くものだと思いますが、それもまた実力だけではなく巡り合わせに左右されます。
例えば怪我もそうでしょう。新しく踊れるダンサーが入団してきたり、芸術監督が変われば、それまでの評価は一変します。そうしたこともある意味日常茶飯事であり、受け入れがたいけれど事実でもあります。
そのように自分の価値が固定化されることなく、揺らぎ続ける中でキャスティング表を見る緊張の瞬間、仲間と汗を流す日々の稽古、舞台での高揚感、大粒の雨のように降り注ぐ拍手。これらの経験は一生の宝物になります。
けれど、その時間は永遠ではありません。どんなキャリアを歩んでも、やがて「次」を考える時が訪れるのです。
バレエ団での時間は「有限」である
やがて、多くのダンサーにとって「次のキャリア」を考える時期が訪れます。それは、年齢や結婚、怪我、役が回ってこなくなったことなど、その理由はさまざまです。
ですが、共通して言えるのは、バレエ団で過ごす時間には必ず「終わり」があるということです。
ところが、外の社会に目を向けたとき、そのキャリアをどう変換するかは簡単ではありません。
仮にプリンシパルとして舞台に立っていたとしても、その経験がそのまま社会で評価されるわけではありません。もちろん指導者という道は開けますが、それ以外の場では「スキルの変換」が難しいのが現実です。
社会とのギャップ
一般的な社会では、20代・30代を通じて専門スキルを積み重ね、キャリアを広げていきます。もし30歳で退団し、バレエ以外のスキルを持っていなければ、同年代の社会人と比べて大きなハンデを抱えることになります。彼らは10年以上、その分野に費やしてきているからです。
バレエ団で踊ることは確かに特別ですが、他の分野の人々も同じように特別な努力を続けています。
「バレエがすごい」のではなく「みんながすごい」
そう認識することは、社会に出てからの謙虚さや学び直しの姿勢につながるはずです。
加えて、国内のバレエ団の多くは収入や雇用条件が不安定です。だいたいは雇用契約ではないでしょう。そしてもちろんお給料ではなく、1ステージあたりに出演料が支払われることが多いのではないでしょうか。しかしそれ以上のチケットノルマや団費があることもあります。
そのこと自体は、それぞれのカンパニーの考え方、運用の仕方があり、また子どもではなく一人の大人として、それを理解してそこにとどまっている以上は、別に問題とすることではあまりないかもしれません。
そのことよりも社会人としての個人の問題点は、生活が厳しいだけでなく、いち社会人としての常識や立ち振る舞いを学ぶ機会を失ったまま時間が過ぎてしまうリスクがあるということです。
これは、退団後の人生設計をより難しくする要因の一つです。
そして、30代や40代からのゼロスタートは厳しい現実が待っています。
例えば18歳でバレエ団に入団するのと、30歳で入団するのでは、求められるスキルは違うはずです。30歳からの入団者に18歳のスキルは求めないですよね。
年齢相応のスキルを求められるということは、年齢が上がれば上がるほど、ハードルも上がるということです。
それと同じことが、一般社会でも起きるのです。
限定された時間だからこそ
大切なのは、バレエ団での時間は「通過点」であり「永遠ではない」と理解することです。その期間が1年であっても10年であっても、有限であるからこそ大切にできるのです。たとえ正団員でなくても、研究生であっても、ジュニアカンパニーであっても、同じことです。
入団後、舞台にも慣れ、生活がルーティーンのように感じられ、落ち着いた時期からこそ「次の準備」を始めることをおすすめします。
退団してからゼロから学ぶのでは遅すぎることもあります。
社会は待ってはくれません。同年代はすでに次のステージで実績を重ねています。だからこそ、在団中から「外の社会とつながる視点」を持ち、経験をどう変換していくかを意識しておく必要があります。
なぜなら、「それまで何をしてきたの?」と言われれば、もちろん「バレエを踊ってきた」になりますが、それで通用するほど外の世界は甘くないからです。
次の人生をどう生きるか
バレエ団での生活は特別で、他では決して味わえないものです。しかし、それは「ある期間の出来事」であり、その後の人生の方がはるかに長い。
だからこそ、バレエ団での時間を未来へつなげる準備をしながら過ごすことが大切です。
バレエ団に所属している方の中には、未来への不安から、あえて次の人生を考えないようにしている方もいらっしゃるかもしれません。まだ見えない次のステージに向き合うのは、怖さや抵抗感もあることでしょう。
バレエ団では選ばれないこと、あなたの努力が認められないことの方が正直多いと思います。
そうした環境や時間を過ごしていく中で、自分の価値がわからなくなる、自己肯定感や自己効力感が下がっていく経験は、多くのダンサーが味わうものだと思います。だからこそ、外に出ても大丈夫なのか、不安になるのですが、そうした感情はとても自然なものだと言えるでしょう。
でも安心してください。バレエ団は終着点ではありません。退団したとしても、そこで培った経験は必ず社会で活かすことができます。
強靭な心、研ぎ澄まされた集中力、人前で表現する力。それらは形を変えて、次のフィールドで光り続けます。そして実際のところ、バレエ団でどのようなキャリアを歩んできたかは、良くも悪くも社会の中ではさほど影響しません。大切なのは「そこで何を得て、どう次へつなげるか」です。
バレエ団での時間を「輝かしい思い出」として閉じるのか、それとも「次の人生の礎」として活かすのか。それを決めるのは、在団中のあなたがどんな視点を持ち、どんな準備をするかにかかっています。
「次を一緒に考える」ということ
キャリアは、与えられるものではなく、自分で形づくっていくものです。けれども、自分だけで考えていると視野が狭くなり、「バレエ以外に自分には何もないのではないか」と思い込んでしまうことも少なくありません。まして、同じ様に悩みを持つ仲間に相談しても、そこに答えがあるわけではありません。慰め合うことはできても、問題解決には繋がらないことの方が多でしょう。
だからこそ、必要なのは 「先輩たちや専門家との対話の場」 を持つこと。
その先を歩んできた人たちと一緒に話し合い、選択肢を広げていくこと。自分の経験を言葉にし、他の人の視点を取り入れながら未来を描いていくこと。それが、安心して新しい一歩を踏み出すための支えになります。
「仕事を作る」学び
現代は「仕事に就く」だけではなく、「仕事を作る」という視点も必要です。
バレエ団後の人生をどうデザインするかは、単に就職先を探すことだけではありません。自分の強みや経験を活かし、新しい価値を生み出すこともまた一つの道です。
- バレエで培った集中力や表現力をどう社会に応用できるか
- 人に教えるスキルを教育や福祉、健康の分野にどうつなげるか
- 自分の経験を語ることを通じて、新しいコミュニティやプロジェクトを立ち上げられないか
こうした問いを共に考え、学び合うことこそが、次のキャリアを形にしていく上で大切なのです。
場を持つことの意味
私たちは、そうした「考える場」「学ぶ場」を提供しています。
バレエ団でのキャリアは誇りであると同時に、人生のほんの一部分です。その後の時間をどう生きるかによって、その経験がさらに価値あるものになるのか、それとも過去の思い出の中に閉じ込められてしまうのかが決まります。
だからこそ、退団後を「空白の時間」にしないために。そして「不安」ではなく「新しい挑戦の始まり」にするために。
一緒に学び、一緒に考え、一緒に作っていく。そんな場所を、これからも大切にしていきたいと思います。
一緒に未来を描くために
今バレエ団での日々が充実している方は、あまり響かないかもしれません。
でもそれで構いません。
もし今後、今回コラムに書いたような不安を感じる日が来た際には、ぜひ思い出していただければと思います。
バレエ団後のキャリアは「個人の問題」ではありません。それはバレエ界全体に関わるテーマであり、ひとりひとりの未来が積み重なることで、この業界の文化そのものが変わっていきます。
だからこそ、私たちは「次を一緒に考える」場を大切にしています。
私たちの資格の中には『ライフ&ワーク』というコースがあります。
バレエ団後の人生をどう設計するか、仕事をどう作っていくかを、自分自身を振り返り、再び自信を持って社会で生きていくための対話のコースです。
バレエを踊った時間を、人生の中でより輝かせるために。
そして、あなた自身が「この先の方がもっと輝ける」と、ワクワクした緊張感の中で、自信を持ってそう思える未来を手にするために。
専用のスタッフがお話を伺う中で、未来だけでなく、今の生活自体も期待を持って過ごせるよう、導いていきます。
今、バレエ団での活動や今後の人生に不安を抱えている方は、ぜひお気軽にお声掛けください。
バレエ安全指導者資格®︎ 事務局
ライフ&ワーク – 生きること、働くことを改めて見つめ直し、未来に期待するためのコース
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