Ballet, Food and Health
成長する身体を、敵にしない。 バレエと摂食障害・月経を考える 「踊れるからだをつくろう!」川添智香さんとのトークより
生理が始まること、身体の丸みや重さが変わることは、健やかな成長の一部です。 「細さ」を優先して未来の健康を削るのではなく、 踊り続け、人生を生きていく身体を大切にするバレエ環境を考えます。
この記事の結論
成長期の体型変化や月経は、排除すべき不都合ではなく、身体の発達と健康を考えるための重要な情報です。 運動量に対して利用できるエネルギーが不足すると、月経、骨、代謝、免疫、心理面、パフォーマンスなどに影響する可能性があります。 指導者の役割は体重や病気を診断することではなく、体型を価値と結びつけず、変化に気づき、本人と保護者が適切な医療・栄養・心理支援へつながれる環境をつくることです。
みなさま、こんにちは。
セーフダンスアソシエーションです。
今回は、「踊れるからだをつくろう!〜バレエと食・身体を考えるフォーラム〜」初日に行われた、 デンマーク王立バレエ団ダンサー・川添智香さんとのトークからお伝えします。
A Personal and Important Story
率直な言葉だからこそ、今、届けたい
今回のトークでは、川添さんから大変貴重で、とても個人的な経験をお聞かせいただきました。 動画をご覧になった方の中には、驚きや衝撃を受ける方もいるかもしれません。 けれど、表からは見えにくい経験を率直に語ってくださったからこそ、 今のバレエに関わる私たちが学べることがあります。
「踊れるからだをつくろう!」初日トーク
川添智香さんに、身体、健康、成長、摂食障害をめぐるご自身の経験をお話しいただきました。
Before the Disorder
摂食障害より手前にある、身体への無理解と偏見
問題が深刻になる前から、子どもは周囲の言葉や空気を通して、 自分の身体をどう扱うべきかを学んでいます。
自然な変化への否定
初経、月経、体型の変化、身体の丸みを「踊りに不都合なもの」と扱うと、成長そのものへの不安が生まれます。
細さと価値の結びつき
細い身体を、才能、努力、美しさ、配役の価値と結びつける言葉は、子どもの自己認識に影響します。
大人による価値観の再生産
指導者や発信者が、過去に受けた指導を正しい知識で見直さないまま、次の世代へ伝えてしまうことがあります。
摂食障害は、単一の原因で起こるものではありません
摂食障害には、心理的・社会的・生物学的な要因などが複雑に関係します。 バレエの体型圧力だけを原因と断定することはできませんが、細さへの過度な評価、比較、食事制限の推奨、相談しにくい環境は、見過ごしてよいものではありません。 変化が気になる場合は、本人を責めたり食事を強制したりせず、医師や地域の相談窓口へ早めに相談してください。
Question the Myth
「細ければ評価される」「軽ければ上達する」という思い込み
身体を軽くすることと、
踊る力が高まることは同じではありません。
体重や体型だけで、技術、健康、表現力、将来性を判断することはできません。 食事を削ってエネルギーが不足すれば、練習への集中、回復、筋力、骨の健康など、 踊るために必要な条件を損なう可能性があります。
- 細いほどバレエが上手になる
- 月経が来ないほど努力している
- 体重を減らせばすべての技術が改善する
- 成長による体型変化は本人の自己管理不足
- 技術は身体条件だけでなく学習と練習の質で育つ
- 月経の変化は身体状態を確認する重要なサイン
- 運動量に見合う栄養と回復がパフォーマンスを支える
- 思春期の変化には大きな個人差がある
Growth and Energy
成長期は、未来の身体の基礎をつくる時期
成長期には、日々の生活と運動に必要な分に加えて、 身体そのものが発達するためのエネルギーと栄養も必要です。
骨
将来を含めた骨の健康を支える重要な時期です。エネルギーやホルモンの状態も関係します。
筋肉と回復
練習で使った身体が回復し、適応するためには、食事と休養が欠かせません。
血液と全身状態
鉄を含む多様な栄養素は、健康状態や運動時のコンディションに関係します。
ホルモンと月経
思春期のホルモン変化と月経は、身体の発達や健康状態を考える重要な情報です。
Relative Energy Deficiency in Sport
REDs
スポーツにおける相対的エネルギー不足
食事から得るエネルギーと、運動・生活・成長に必要なエネルギーのバランスを考える視点です。
IOCの合意声明では、運動後に身体の機能を維持するために利用できるエネルギーが不足する状態が続くと、 健康とパフォーマンスの両方に幅広い影響が生じ得ると整理されています。 REDsは女性だけの問題ではありませんが、月経の変化は女性ダンサーの身体状態を考える重要なサインの一つです。
Menstrual Health
月経を、不都合なものではなく健康のサインとして見る
生理が来ないことを、
「バレエのためには良いこと」にしない。
月経について安心して話せる環境と、必要なときに婦人科へつながれる体制が大切です。
相談を検討してほしい変化
月経には個人差がありますが、次のような変化がある場合は、本人だけで抱え込まず婦人科などへの相談を検討してください。
- 15歳になっても初経が来ていない
- 3か月以上、月経が止まっている
- 月経が2週間以上続く、または短い間隔で繰り返す
- 月経痛、過多月経、PMSなどが生活や踊りに影響している
- 急な体重変化、強い疲労、繰り返すケガなども気になる
What Adults Can Do
子どものそばにいる大人が変える5つのこと
子どもだけに「正しく食べよう」と伝えても、細さを評価する環境が変わらなければ問題は残ります。
体型を評価語にしない
「太った」「細くてきれい」を、技術、努力、配役の価値と結びつけないようにします。
減量を安易に勧めない
体重調整が必要に見えても指導者だけで判断せず、医師や管理栄養士などと連携します。
月経を話せるテーマにする
プライバシーを守りながら、月経や体調を恥ずかしいことにしない雰囲気をつくります。
体重以外の変化を見る
疲労、気分、集中、ケガ、食事への不安、月経などを含め、全体の変化に気づきます。
早めに支援へつなぐ
本人を責めず、一人で解決しようとせず、保護者や適切な専門家へ相談します。
この記事は診断や治療に代わるものではありません
摂食障害、月経不順、無月経、低エネルギー状態などが疑われる場合、指導者が診断したり、食事や体重を管理したりするのではなく、医療機関や適切な有資格専門職へ相談してください。 急激な体重変化、失神、胸痛、意識状態の変化、自傷・自殺に関する言動など、緊急性が疑われる場合は、速やかに医療・緊急支援につないでください。
Gynecology Guide
ジュニアバレリーナと
指導者のための婦人科ガイド
成長期の身体の変化、月経の基礎、月経不順・無月経、受診を検討したいサインを、 ダンサー本人、指導者、保護者に向けて整理しています。
正しい知識を、子どもの未来を守る判断へ
セーフダンスアソシエーションでは、月経や女性の健康を「言いにくいこと」のままにせず、 必要な医療へつながるための情報を公開しています。
- 月経と女性ホルモンの基礎
- 初経の遅れ、月経不順、無月経
- 低エネルギー状態と骨の健康
- 婦人科の受診を検討したいサイン
- 指導者が環境づくりで配慮したいこと