Ballet and Self-Belief
バレエで、自信を失わせない。 バレエで、自信を育てる。 川添智香さんとの対談から考える、健やかなバレエ教育
バレエは、自分の足で立ち、音楽とともに身体を動かし、 自分にしかできない表現を見つける芸術です。 だからこそ、技術とともに「自分を信じる力」が育つ場所であってほしいと私たちは考えています。
この記事の結論
子どもの自信を育てるバレエ指導とは、ただ褒め続けることではありません。 結果だけでなく過程を具体的に認め、他者との比較ではなく本人の変化を伝え、失敗しても関係や価値が失われないと感じられる環境をつくることです。 技術的な課題を伝えながら、自己肯定感と自己効力感を守ることは両立できます。
みなさま、こんにちは。
セーフダンスアソシエーションです。
今回は、先日行われたデンマーク王立バレエ団ダンサー・川添智香さんとの対談から、 「健やかに踊ること」と「バレエで自信を育てること」について考えます。
Special Dialogue
川添智香さんから届いた、温かく力強いメッセージ
海外のバレエ団での経験、異なる国や文化、求められるダンサー像や価値観の違い。 その中で川添さんが感じてきた「健やかに踊ることの大切さ」は、 日本でバレエ教育に携わる私たちが、今あらためて向き合うべきテーマです。
川添智香さんとの対談
海外のバレエ団で感じた価値観の違いと、ダンサーが健やかに踊るための環境についてお話しいただきました。
Healthy Dance Environment
健やかに踊ることは、技術と対立しない
安心できる環境は、厳しさをなくすことでも、目標を下げることでもありません。 挑戦を続けるための土台を整えることです。
国や組織で価値観は異なる
一つのバレエ観だけが世界共通の正解ではありません。文化の違いを知ることは、現在の指導を客観視する機会になります。
健康は表現を支える
心身が消耗しきった状態では、学び、回復し、舞台で表現することはできません。健康は継続的な成長の条件です。
環境が自己認識をつくる
日常的に受け取る言葉や評価は、子どもが「自分はどのような存在か」を理解する材料になります。
Self-Esteem and Self-Efficacy
「私は大切」と「私なら取り組める」を、ともに育てる
自己肯定感と自己効力感は近い言葉ですが、指導で意識したい役割は少し異なります。
自己肯定感
できる・できないだけで自分の価値を決めず、今の自分を大切な存在として受け止められる感覚です。
自己効力感
難しいことに直面しても、工夫しながら行動すれば前へ進めると、自分の可能性を信じられる感覚です。
日本の子ども・若者の自己認識は、社会全体で考える課題
こども家庭庁が13~29歳を対象に日本・アメリカ・ドイツ・フランス・スウェーデンで実施した令和5年度の国際比較調査では、 日本で「私は、自分自身に満足している」に「そう思う」と答えた割合は57.4%でした。 前回調査から改善している一方、約4割は肯定的に答えていません。
この数字だけで一人ひとりの状態を判断することはできませんが、 子どもが日常を過ごす教育や習い事の場で、自分の価値と可能性を感じられる関わりを考える必要があります。
Beyond Subtractive Teaching
減点だけでは、人は自分の成長を見失う
「もっと頑張らなければ、認めてもらえない」ではなく、
「今の自分から、次へ進める」と感じられる指導へ。
バレエは本来、身体を通して自己表現を学ぶ、美しく創造的な芸術です。 けれど、できていない点だけを探す評価が続き、 子どもが「うまくできたときだけ自分には価値がある」と受け取ってしまえば、 バレエを通して自信を失うことになりかねません。
- できていない点だけを繰り返し指摘する
- 他の生徒との比較で努力を促す
- 失敗を才能や人格の問題として扱う
- 結果が出たときだけ関心や承認を示す
- 改善点と、すでにできていることを両方伝える
- 昨日までの本人との変化を具体的に示す
- 失敗を次の方法を考える材料として扱う
- 結果だけでなく試した工夫や継続を認める
For Teachers
寄り添いたいのに、うまくできない先生へ
その葛藤は、指導力がない証拠ではありません。 真剣に生徒を見ているからこそ生まれる悩みです。
「褒めるのが苦手」
自分自身が結果や不足だけを指摘されて育った場合、肯定的な言葉の選択肢を持ちにくいことがあります。
「励ましたつもりが、プレッシャーになった」
善意の言葉も、相手の状態や関係によって異なる意味で受け取られることがあります。
「自分がされてきた指導を繰り返してしまう」
過去の経験は、気づかないまま現在の判断や態度に表れます。まず責めずに気づくことが、変化の始まりです。
Four Practical Shifts
明日のレッスンから変えられる4つの関わり
指導をすべて変える必要はありません。まずは、言葉を一つ増やすところから始められます。
結果から、過程へ
成功したかだけでなく、何を工夫し、どこまで続けたかを言葉にします。
「今、音をよく聴いてタイミングを変えたね」
比較から、本人の変化へ
誰かとの違いではなく、その生徒の昨日までとの変化を伝えます。
「前より自分で重心を戻せるようになったね」
命令から、問いかけへ
答えをすべて与えず、本人が感覚を確かめ、方法を選ぶ余地をつくります。
「どちらの方法が、今の身体では動きやすい?」
曖昧な称賛から、具体的な承認へ
「すごい」だけではなく、見ていた事実と価値を具体的に伝えます。
「失敗したあと、もう一度試したことが大切だね」
Mental Support Course
心のサポーター
withバレエ コース
「心に寄り添う」を理念だけで終わらせず、 バレエの現場で実践するための基礎を学びます。
寄り添いたいと願う指導者の方にこそ
心の仕組みを知ること、生徒にとって安全な関わりを学ぶこと、 自分が受けてきた指導を無意識に再生産しないために振り返ること。 それは、目に見える技術以上に長く、子どもの未来を支える学びになります。
- 心と感情の基本的な仕組み
- 生徒の声を否定せずに聴く方法
- 自分の価値観や指導傾向への気づき
- 支援者としての役割と専門家へのつなぎ方