子どもを守るために、 今知っておきたい月経とバレエの話。 「生理がない方が踊りやすい」を、安全な知識へアップデートする
月経が止まっていることを「バレエではよくあること」「身体が軽くて都合がよい」と捉えるのは、安全な考え方ではありません。成長期の月経不順や無月経にはさまざまな原因があり、低エネルギー利用可能性が関係する場合には、骨の健康を含む全身への影響も考える必要があります。指導者と保護者が、見逃さず、決めつけず、適切な医療へつなぐための基礎を整理します。
この記事の結論
月経が来ない、あるいは大きく乱れている状態を「バレエをしているから普通」と決めつけないことが大切です。月経の変化は身体の健康状態を考える重要な情報の一つであり、特に十分なエネルギーが確保できていない状態が続く場合、月経機能や骨の健康などに影響する可能性があります。指導者の役割は診断することではなく、変化に気づき、本人を責めず、保護者と共有し、必要な医療につなぐことです。
UPDATE THE OLD MYTH
「生理がない方が、
身体が軽くて踊りやすい」?
みなさま、こんにちは。セーフダンスアソシエーションです。
今回は、『子どもを守るために、今知っておきたい月経とバレエの話』というテーマで、成長期のダンサーに関わる指導者・保護者が知っておきたい月経と健康について考えます。
「生理がない方が体が軽い」「バレエを続けるなら生理が来ない方がよい」。もしこうした考え方が残っているとすれば、医学的な知識によって更新する必要があります。
月経がないことを、
「踊るために都合のよい状態」と考えない。
月経は、一人ひとりの身体や健康状態を考えるための情報の一つです。月経不順や無月経には複数の原因があるため、指導者や本人だけで原因を決めつけることはできません。
AMENORRHEA IS A HEALTH SIGNAL
「生理がない」を、
好都合な状態として扱わない
月経の変化を、体型や努力の証として評価するのではなく、健康の視点から確認します。
原因を決めつけない
無月経にはさまざまな原因があります。「痩せたから」「練習しすぎだから」と指導者が診断するのではなく、医療機関で評価することが必要です。
「バレエでは普通」にしない
周囲にも同じ状態の人がいるからといって、安全であることにはなりません。月経の大きな変化が続く場合は確認が必要です。
体重だけで判断しない
特定のBMIだけで無月経やREDsの有無を判断することはできません。食事量、活動量、月経、骨の健康、心理面などを総合的に見る必要があります。
本人を責めない
月経は本人の「努力」や「自己管理」の優劣を示すものではありません。相談しやすい環境を整えることが大切です。
早めに相談する
月経が来ない、大きく乱れる、体調変化が続く場合は、婦人科など適切な医療機関へ相談します。
FEMALE ATHLETE TRIAD & REDs
月経だけを見るのではなく、
エネルギー・骨・全身をつなげて考える
現在のスポーツ医学では、「女性アスリートの三主徴」に加え、より広い概念としてREDsが用いられています。
ATHLETE
TRIAD ENERGY × MENSTRUATION × BONE
女性アスリートの三主徴は、相互に関係する三つの領域から捉える考え方です。
- 低エネルギー利用可能性
- 月経機能の異常
- 骨の健康低下
さらにIOCは、長期的または重度の低エネルギー利用可能性が、月経や骨だけでなく、さまざまな生理機能・心理面・パフォーマンスへ影響し得る状態を「REDs(Relative Energy Deficiency in Sport)」として整理しています。
PROTECT BONE HEALTH DURING GROWTH
成長期は、
将来の骨の健康を育てる大切な時期
だからこそ、目の前の舞台だけではなく、何年先も使い続ける身体を守ります。
骨の健康に関わること
- 十分なエネルギー摂取
- 栄養バランス
- 適切な運動負荷
- 休養と回復
- ホルモン・月経機能
見逃したくない変化
- 月経の大きな変化
- 繰り返す疲労骨折・骨ストレス障害
- 体重・食行動の大きな変化
- 慢性的な疲労
- パフォーマンス低下
THE TEACHER’S ROLE
指導者の役割は、
診断ではなく「気づき、つなぐ」こと
医学知識を持つ目的は、教師が医師になることではありません。
指導者は、日々のレッスンで生徒の変化を見られる立場にいます。だからこそ、「以前と違う」「疲れ方が大きい」「怪我を繰り返している」といった変化に気づくことができます。
一方で、無月経の原因を断定したり、薬やホルモン治療について指示したりすることは指導者の役割ではありません。
KNOWLEDGE BEYOND PERSONAL EXPERIENCE
男性指導者にも必要な、
「自分とは違う身体」を学ぶ姿勢
体験できないことを、想像だけで判断しないために医学的な知識があります。
男性指導者にとって、月経や女性ホルモンの変化は、自身の身体では経験できない領域です。だからこそ「分からないから触れない」のではなく、安全に関わる基礎知識を学び、必要なときに適切な専門家へつなぐことが重要です。
人は、自分とは違う身体を持っている。
その前提から、安全な指導は始まります。
これは月経に限った話ではありません。年齢、性別、成長段階、既往歴、身体特性など、生徒一人ひとりの違いを尊重することが、これからの指導者に求められる基本姿勢です。
LEARN FROM GYNECOLOGY
婦人科医から、
「現場で迷う判断」を学ぶ
2026年2月8日、婦人科医・塚田訓子先生をお招きし、バレエ指導者・保護者に向けたセミナーを開催しました。
月経の変化を見る
どのような変化を「一度医療に相談してみよう」というサインとして捉えるかを学ぶ。
受診につなぐ
指導者や保護者が抱え込まず、婦人科など医療機関へ相談するタイミングと伝え方を考える。
ホルモン治療を正しく知る
低用量ピル等を含む選択肢は、目的・年齢・健康状態に応じて医師と相談して決めるものであり、思い込みだけで評価しない。
身体と進路をつなげる
コンクールや舞台だけでなく、10年後、20年後の健康まで含めて指導を考える。
相談できる文化をつくる
月経を「言ってはいけないこと」にせず、本人が必要な支援へアクセスできる環境を整える。
FROM “I DIDN’T KNOW” TO SAFE JUDGMENT
「知らなかった」を、
子どもを守れる知識へ
目の前のコンクールや舞台の結果のために、その後の健康を犠牲にする指導であってはなりません。
月経の知識を持つことは、バレエの技術から離れることではありません。長く踊るための身体を守り、生徒自身が自分の健康について考えられるようにすることも、教育の一部です。
10年後、20年後も、
健康に踊り、幸せに生きていける身体を育てる。
GYNECOLOGY GUIDE
月経・成長・女性の身体を、
もっと知るために
ジュニアバレリーナと指導者のための婦人科ガイドでは、月経をはじめとする女性の身体について、健康と安全の視点から学べます。
FOR YOUNG DANCERS, PARENTS & TEACHERS
ジュニアバレリーナと指導者のための婦人科ガイド
「何が正常なの?」「いつ相談すればいい?」「先生はどこまで関わればいい?」。月経や成長について、本人・保護者・指導者が一緒に考えるための入口としてご活用ください。
- 月経を健康の視点から考える
- 成長期の身体について知る
- 無月経・月経不順を放置しない
- 医療へ相談するという選択肢を持つ
- 本人が自分の身体を理解する
RELATED INFORMATION
身体のサインを、見逃さない指導へ
本記事は、月経・低エネルギー利用可能性・女性アスリートの三主徴・REDsについて、指導者と保護者が安全な判断につなげるための一般的な教育情報です。無月経や月経不順の原因は一つではありません。診断や治療、ホルモン剤等の使用については、必ず医師へご相談ください。医学的整理にはIOCのREDsコンセンサス等の考え方を参照しています。