みなさま、こんにちは。
バレエ安全指導者資格®︎事務局です。

今回のコラムでは、「『指導者として、揺らぎながら立ち続けるということ」というテーマでお話したいと思います。

バレエの指導者は、単に振付やテクニックを教える人ではありません。
美を創り出すアーティストであると同時に、人を導く存在でもあります。特に子どもたちにとっては、その成長に大きな影響を与える存在です。
レッスン中にかけた一言が、その子の心に深く残っていくこともあります。逆に、何気ない態度や言葉が、知らぬ間にその子の自己肯定感や将来の価値観に影を落とすこともある。

それほどに繊細で責任ある立場が「指導者」という存在です。
だからこそ、指導者は「理想」を持つことがとても大切だと思います。

「こんな踊りを見せたい」
「こういう表現者に育ってほしい」

そんな想いがあるからこそ、教えることに情熱が生まれますし、そのエネルギーは生徒にも確実に伝わっていきます。
理想があることで指導は単なる技術の伝達に留まらず、生きた学びの時間になるのです。
けれど一方で、その理想が「唯一の正解」になってしまった時、危うさも生まれます。

「この形でなければダメ」
「このスタイルが正しい」

そんな考えが強くなりすぎれば、他の価値観や背景を否定することにもつながりかねません。
生徒それぞれに異なる身体があり、心の状態があり、育ってきた文化や背景があることを忘れてしまうのは、指導者にとって大きな落とし穴です。

バレエの世界は長い歴史をもち、伝統や厳しさが求められる場面も多々あります。
その厳しさや凛とした美しさがバレエの魅力でもあるでしょう。
でもその中にあっても、指導者の心の中でフラットに人を見るまなざしは、絶対に失ってはいけないものだと私たちは思います。

そのために必要なのは、指導者自身の「学び続ける姿勢」です。
「こう教えてきたから」「これが当たり前だから」という価値観に固執せず、多様な考え方や文化、身体の在り方を知っていく。
そして時には、自分の「当たり前」を疑い、問い続けていく。
自分自身も「揺らぐ」ことを許せる大人であること。

それこそが、思想にとらわれず、理想を柔軟に育てていける土台になるのではないでしょうか。

人は本来、黙っていても偏る生き物だと思います。
だからこそ意識して、自分自身の視野を広げ、学び続けることが大切なのです。

それは決して難しいことばかりではありません。
例えば、整形外科学や心理学、教育学など、他分野から学ぶことでバレエの指導がぐっと広がることもあります。
バレエ安全指導者資格®︎の講座では、こうした「身体」「心」「社会や歴史」に対する幅広い学びを提供しています。

解剖学だけではなく、心の傷を生まない指導とはどういうものか。
生徒一人ひとりの身体や背景を尊重した教え方とは何か。

そんなことを問いながら、自分自身の理想の指導者像を更新していける場所でもあるのです。

【指導者】という言葉は、確かに重いものかもしれません。
でもだからこそ、とてもやりがいのある仕事だとも言えます。

バレエを通して、生徒たちの人生の一端に関わる。
そこに責任を持ちながら、でも恐れずに、自分らしい理想を育てていく。

そんな指導者が、これからのバレエ界にはもっともっと増えていってほしいと願っています。
ぜひ、私たちと一緒に学び合い、より良いバレエの世界を育てていきましょう。

バレエ安全指導者資格®︎ 事務局